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第176話
「もう行くっつってんだろ!駄々こねてんじゃねえよ!」
「だって···だってぇ···!」
「だってじゃねえ!」
いざ、その時間になると俺は怖くて燈人の腰にしがみついたまま動くことを躊躇った。
そんな俺の髪を初めは優しく撫でてくれていた燈人。だけどさすがにずっとそのままでいるとイライラし出して俺の頭をパンっと叩いてきた。
「痛いな!」
「早く行くぞバカ!動け!」
「わかったよぉ···」
ちゃんとしないとダメだってことはわかってるけどさぁ。
だらだらと動き出した俺の腕を掴んで強めに引っ張る。
「お前がそんなんだと親父さんも許してくれねえぞ」
「···うん」
「こっちに来たくねえならそれでいい。俺だって強要してるわけじゃねえ」
「行きたくないわけじゃない」
「ならもっとちゃんとしろ、何に怖がってんだよ。」
わかんないよ!と言いたくなるけどグッと口を閉じて両手で顔をパンっと叩いた。
「怖くない、怖くない!行くよ!」
「おう」
燈人の腕を掴みズンズン歩いて家を出る。
深呼吸をしてからやっぱり···と気分が沈んでいくから振り返って思いっきり燈人に抱きついた。
「行くんだろ」
「行く···でも、ちょっとだけ、」
酷く速く鼓動を落ち着かせようと深呼吸をする。
背中をポンポン撫でてくれる燈人に帰ってきたらたくさん甘えよう。なんて思いながら燈人から離れて浅羽に行くために車に乗り込んだ。
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