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第179話
「ゆっくりって言ってたのに」
「悪かったって」
「結局いつもみたいにわけわかんなくなっちゃったし」
「可愛かったそ」
「動きたくない」
「俺はあの時動きたかったんだ。あんなの我慢できたらそれはもう男じゃねえ。」
話が噛み合わない。
燈人は開き直って俺を抱きしめて髪を撫でて「おはよう」っていつも通りに言ってくるし。
「ねえ」
「あ?」
「一回この感覚味あわせてあげたいから俺に突っ込まれてみない?」
「拒否する」
「言うと思ったー」
でもさでもさ、俺だってたまに思うんだ。
ケツばっか使ってるからたまにはさぁって。
「突っ込みてぇからって浮気すんなよ」
「そんなことする奴に見える?」
「見えねえけど、俺が何かやっちまったらそれ相応な事はするんじゃねえかって思って。」
「何かやっちまう予定なの?」
「そんな予定ねえよ」
それを聞いてあからさまにはぁ、と息を吐くと燈人は眉を寄せて「何だよ」と少し不満気に言う。
「そんなに俺がどこかに行ってしまうんじゃないかって不安なら···前から言ってるけど、監禁でもしてしまえば?」
「そしたらお前泣くだろ」
「何で?嬉しくて?悲しくて?」
「悲しくて」
「泣かないよ」
別に、燈人がいるんだったらいいし。そう思いながら燈人を見つめるとフッと笑って「まあ、そんなことしねえけどな」と頭を撫でられる。
「···もうちょっと寝る」
「ああ。おやすみ」
燈人に優しく撫でられる感覚に安心してゆっくり目を閉じた。
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