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第180話

*** 何だか騒がしい。 言い合うような声と何か重たいものが引きずられたような音、それに食器が割れるような音が聞こえて慌てて起きた。 リビングに走ると燈人がすごく怒った顔をしててその視線の先には羽島くんがいて。 何でいるの?とかそんなことより先に、ソファーがいつもの場所からずれてる所にあるのと、お皿が割れていて破片が床に落ちてるのをみて慌てて2人を止めに入った。 「2人共落ち着いて!」 「うるせえ!お前は黙ってろ!」 燈人に間髪入れずそう言われた。だけどそんなのに負けないし。 燈人に近づいてその怖い顔にビンタを食らわせる。そしたらすごく睨んでくるから俺も睨み返すと一応落ち着いたのかソファーに座って煙草を吸いだした。 「羽島くんも落ち着いて。コーヒー飲む?あ、その前にこれ片付けないとね」 「···ごめん」 「いいよ、それより怪我してない?」 割れたお皿の破片を気を付けながら集めて新聞紙に包みガムテープでぐるぐるにした。 窓を開けて掃除機を入念に当ててから「待たせてごめんね」と羽島くんと燈人にコーヒーを淹れた。 「さて、落ち着いたなら暴れるんじゃなくて話で解決しよう」 何があったの?って気になるっていうのもあるけど、それよりこの2人だけで話をさせてたらまた喧嘩になるかもしれないし···と俺はここにいることにして。 寝間着に寝癖をつけたままの格好だけど、2人が喧嘩を始めるよりいいや。と自分用にと淹れたコーヒーを飲んだ。 「おい、こっち来い」 「怒ってるから嫌。八つ当たりされたくないし?」 「チッ」 「とりあえず、羽島くんおはよう」 笑ってそう言うと羽島くんも小さく笑って「おはよう」と返してくれる。よかった、羽島くんは今は冷静になってるようだから。 「俺びっくりしたんだけど。ていうか何でいるの?仕事?」 「そう。」 「喧嘩したのって仕事のこと?それなら口出さないほうがいい?」 「···別に、仕事の事じゃない」 羽島くんはそう言って俯いた。 燈人は何も言わないしこっちを見ないし、こんなんじゃ話をしたくてもできない。 「羽島くんごめん、今日は帰ってもらっていいかな···?」 「ああ。」 のそり立ち上がって帰ろうとする羽島くんを玄関まで見送る。ドアが閉まって鍵を掛けるとすぐに燈人の所に行った。 「燈人!」 「うるせえ」 「どうしたの」 「···話したくねえ」 そう言ってさっきの羽島くんみたいに俯いた燈人。 目を一切合わせようとしなくて「わかった」と小さく呟いて燈人を抱きしめる。 俺の安心する大好きな匂い、少しくらい燈人が冷たくたって、俺に秘密事をしたって、それがあるから大丈夫だ。 「燈人は怪我してない?」 「してねえ」 「そう?ならよかった。」 「···悪かった」 「ううん、大丈夫」 そりゃ燈人にだって不安定になる時はある。イライラするときもあるしそれを発散したい時だってあるんだ。 俺はそんな燈人を支えてあげないといけないんだ、と強く思った。

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