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第185話
それから数日間経った。その間に燈人の外出は多くなって、俺に行く先も告げずにどこかに行ってしまう。
それに話すらまともにできてない。それは寂しいことだけど口出しをしないのは面倒な奴だと思われたくないから。
今まで散々面倒なことをしてきたのに何を言ってるんだって怒られるかもしれないけど、俺にとってはその時より今の方が怖い。でも、さすがに───······
「辛いよね」
「お前最近ここに来すぎだろ」
「だって1人嫌なんだもん」
桜樹組の幹部室。仕事をしてる羽島くんの隣でボケーっとしてると呆れたように溜息を吐いて俺のことを見る。
「もう少ししたら若も元に戻る」
「俺、何も言ってないんだけど」
「お前を見てたらわかるよ。若はこの時期は不安定になる。若から何も聞いてないなら俺の口からは言えない。もう少しだけ待ってろ」
「それってひどくない?自己中心的すぎでしょ。正直に何も嘘をつかずにそのまま言えば、今俺は燈人に苦しめられてるわけですよ?」
そう言って羽島くんを睨むと「うっ、」と小さく言って唇を噛んだ。
「それでも、俺からは言えない」
「じゃあ誰から聞けばいいのさ。羽島くんと燈人が喧嘩したのも今のことに関係してるの?もしそうならその時、燈人に喧嘩した理由は話したくないって言われてる。今のままじゃ燈人は俺に何も教えてくれない。···ていうか、燈人がこうなるってわかってたなら教えててよ」
溢れてくる愚痴をそのまま吐き出せば「悪い」と一言謝られてそれ以外何も話してくれなくなった。
「燈人が元に戻るまで俺は傍にいない方がいいの?」
「···傷付きたくないなら浅羽に居させてもらえ」
「自分勝手だよね本当」
不安定な燈人を見て声をかける奴はいなかった。桜樹組のみんなは燈人がこの時期こうなることを知ってたんだ。
なのに誰も教えてくれなかった、親父さんでさえも。それは俺が信用されてないからなのか、ただ燈人の為を思ってなのか、わからない。
「いいや、やっぱり燈人に聞く」
「やめておけ、若とお前が傷つくだけだ」
「それでも聞く。今のままじゃ嫌だ」
そう言った俺を怪訝そうに見た羽島くんだけど止めはしなかったから勝手にしろってことだろう。
今、家に燈人はいない。最近いつも朝早くに出て行って夜遅くに帰ってくるからどうせ今日もそうだ。
どうやって聞き出そうか、桜樹から家に帰る間に一生懸命考えた。
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