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第186話

「おかえり」 「ああ」 夜に遅くに帰ってきた燈人はまたあの匂いをつけている。 最近全然してなかったけど、燈人に走り寄ってキスをした。 驚いて目を見開いた燈人は俺を壁に突き飛ばして距離をとる。その後少ししてハッと我に返ったのだろうか、「悪い」と俺の傍に寄り頭を下げる。 「···あのさ」 「あ?」 「何で最近何も言わないで出て行くの···?」 「それ、は」 「何で、俺と話すらちゃんとしてくれないの···?」 「っ···」 「何でっ!そんな匂いつけてるのっ」 思ってることを吐き出した。そしたら涙が出てきて拭っても拭っても止まらないからもういいやって放ったらかしにする。 「女とヤッてんの?やっぱり女の方がいい?俺じゃ満足いかない?」 「ち、がっ」 「違うなら話してよ!!もう嫌だよ1人は···俺だけ、俺だけ置いてかれて···誰も何も話してくれない。」 ドロドロと溢れてくる言葉は自分を守るために自分のことだけしか考えてないものだけれど、それでもその言葉を訂正する気にはなれない。 「もうさ···嫌いになったらそれでいいから、早いとこ言ってくれないかな。ここ出て行くし、家も解約しちゃったから早く新しいの見つけないといけないし、今なら浅羽にも帰れるし」 「真守···」 「何」 どうしたらいいかわからないって顔。動揺しすぎでしょ、何も言葉が出ない燈人を無視してリビングに行ってソファーに座る。 言いたいことは言った、だから後は燈人がどうするかだ、それによって俺のこれからは全部決まる。 「───···真守」 「何」 「俺、女抱いた」 「あっそ。」 素っ気なく返したけど、どうしても胸が痛い。苦しい。泣きそうだ。 「でもそれは···っ、」 「それは、何?別に言い訳とかいらないし、俺出て行く?早くここから消えた方がいい?」 振り返って燈人のいる方を見ると唇を噛んでそこから血を流してる。走って「やめなよ!」って言いたいところだけどそれをぐっと堪えて動かないでいた。 「···俺は、8年前に、好きな奴がいたんだ」 ゆっくりと口を開いた燈人は歩いてきて俺の座る隣に腰を下ろした。

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