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第189話 真守side·
目を覚ましたら見慣れない天井。
体の所々が痛くて眉を寄せた。
「どこ···」
「起きたか」
声が聞こえた方に顔を向けると羽島くんがいた。何故だか悲しそうな顔をしていて「どうしたの···?」とそっちに手を伸ばす。
「あ、あれ、燈人は?」
「悪いが今は会わせられない。」
「···そう。羽島くんがそう判断したなら従うよ」
ふっと笑って伸ばしていた手から力を抜く。
羽島くんは俺のそばに寄ってきて「悪かった」と頭を下げた。
「ちょっとちょっと、やめてよ。羽島くん俺に何かしたの?あ!もしかして寝てる間に···!」
「んなわけねえだろ!···若のこと、何も言わなかったから···」
「ああ、里さんの話ね。あんなの羽島くんが言えるはずがない話だったし、だから気にしないでよ。こうなったのは羽島くんのせいでも、燈人のせいでもないから」
これはきっと里さんと俺のせい。
って思ったけど死んでしまった人間にそんな責任を押し付けたくないから俺のせいだけでいいか。
「もとは俺が燈人に声かけなかったらこんなことになってないしね」
「···お前のせいでもないだろ」
「ふふっ、羽島くんは優しいねぇ」
寝ていたベッドから上半身だけ体を起こした。すぐに心配そうに俺に手を伸ばす羽島くんに甘えて凭れ掛かる。
「里さんがすごく羨ましいよ」
「何でだよ」
「俺は、誰もいなかったんだ。弟は死んだし、それ以来親だって俺を見てくれなくなった。居場所もなくなって、どうしようもなくなった時に浅羽の親父が手を差し伸べてくれた。」
「ああ」
「でも、里さんは居場所があったんだよ、燈人はすぐそこにいたんだから。」
もし、もしも俺の弟が死んで、親が俺を見放した時、燈人が側にいてくれたなら俺はこんな歪んだ奴にはなってなかったんじゃないかと思う。
「ひどいよね。俺の欲しいものが里さんの側にあったくせに里さんはそれを見ようとしなかった。」
死んでしまった人を悪く言うなんて最低だ。
だけど止まらない、言葉と同時に涙が出てきて羽島くんに見られないように顔を伏せた。
「なあ」
「ん、何?」
「お前は優しすぎる、もう若の側にいるのはやめて違う奴にしろよ」
「ふふっ。何それ、燈人と別れて他の奴と付き合えって?冗談でしょ」
「普通なら若や俺を責めるはずだ、里さんのことも、里さんのお姉さんのことも、何もかも秘密にしてたんだから」
拳を強く握る羽島くん。そんなに思い詰めないでよ、と彼の頭をポンポンと撫でる。
「あのね、俺は誰も責めるつもりはないし、さっきも言ったけど燈人も羽島くんも、悪いことしたわけじゃないでしょ。気にしないで。」
「でも···」
「どうしても、羽島くんの気がおさまらないんだったら、うーん、そうだなぁ···。あ、燈人と会えない間、俺のことかまってよ、寂しいしさ」
そう言うと何度も頷いて首がおかしくなるんじゃないか?と少し心配になった。
「ていうかここどこ」
そして改めて見渡したそこは初めて見る部屋で話の流れも空気も無視してそう言葉を発した。
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