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第190話

「俺の家」 「あ、そうなんだ。ごめんね、迷惑かけちゃって」 掛けてくれていた布団を畳む。羽島くんは首を左右に振ってジンジンと少し痛む殴られた箇所に優しく触れた。 「痛いよな」 「殴られるのなんて慣れてるよ、大丈夫」 「あの···お前さえよければだけど、しばらくここにいねえか?若が元に戻るまで、ここに。」 「羽島くんは迷惑じゃない?」 「ああ。寧ろそうしてくれ」 「わかった」 ヘラヘラ笑って見せると羽島くんも小さく笑った。 それからちょっと待ってろって言って部屋から出て行った羽島くん。少しして戻ってきて「親父にこのことは言ってるけど、若には言わないでくれって頼んだから、何かあったら俺か親父に言ってくれ」と言われコクリ頷いた。 「あのさ」 「あ?」 「お腹すいた。今何時?」 部屋にかけてある時計に目を向けると短針が8を指している。カーテンのかかる窓からそこを覗くと外は暗い。夜の8時か。 「飯作ってくる、何か食えないものあるか?」 「ううん。そういえば羽島くん料理するの上手かったよね」 「人並みだろ、ちょっと待ってろ」 「はーい」 部屋から出て行く羽島くん、このまま一人ここにいてもつまらないなぁとその後をついて行くと綺麗なリビングが広がっていて思わず「わあー!」と声を上げた。 「何だよ」 「すごい綺麗だね」 「これでもちゃんと掃除してるからな」 「仕事大変なのにすごいね。俺なんて一人で暮らしてる時ぐちゃぐちゃだったよ。燈人に怒られたもん」 「俺も出来る時にしかやってねえから、若みたいに綺麗好きってわけでもねえしさ」 苦笑をこぼした羽島くん、その後少しして何かを作ってすぐに俺の前に持ってきてくれた。 「鍋焼きうどんだ!!久しぶりに食べるよ!!わぁ、美味しそう···」 「熱いから気をつけろよ」 「はーい」 まるでお母さんみたいだなぁ、と思いながら「いただきます」と掌を合わせた。

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