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第192話

「お風呂ありがとね」 「おい、こっち向け」 「え、何?」 言われた通り羽島くんの方を向けばなぜか鋭い目で睨まれている。あれ、あれ、何かしたっけ。 「髪濡れっぱなしだろ」 「あ、ごめん、ついいつもの癖で···」 「風邪ひくぞ、タオル貸せ」 手に持ってたタオルを羽島くんに渡せばワシャワシャと髪を拭いてくれる。けど力が強くて少し痛い。 「ね、もうちょっと優しくして」 「髪拭いて出てこねえからだ!」 「ごめんってば」 そんなとき目の前にあった羽島くんの携帯が震えた。 舌打ちをしてそれを手に取り「悪い、電話」とその場で電話に出る。 「もしもし」 「───────」 「無理だ」 「───────」 「···ちょっと待て」 携帯から耳を離して俺を見た羽島くんは苦い顔をしながら聞いてくる。 「弟達がここに来たいって···」 「俺はいいよ!ていうか俺の方が邪魔でしょ、出てこっか?」 「いい、お前はいろ。じゃあ悪いけど···」 「気にしないで」 ヘラヘラ笑ってそう言うと携帯を耳に当てて「気をつけて来いよ」と優しく言っていた。羽島くんはお兄さんだったんだ。だからこんなにも甘えやすいし頼れるのかもしれない。 「クッソ面倒な奴らだけど無視しとけばいいから···」 「何で!無視なんてしないよ」 「悪戯好きなんだ、気をつけろよ」 「え、うん。」 悪戯って言ってもそんな大したことじゃないでしょ。と笑ってたら突然玄関がドンドンとうるさく叩かれる。インターフォンの軽快な音が連続して何度も何度も聞こえてきて思わず顔が引きつった。 「あいつらだ···悪い、本当悪い···」 「い、いいから、玄関開けてあげなよ···」 これからとんでもない奴が来る予感がして気合を入れてソファーで待っていた。

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