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第202話
不貞腐れてる太陽、架月はいつもの調子に戻って「俺も風呂」と走って行った。
部屋は太陽がつけたテレビのバライティー番組のおかげで少しだけ賑やかだ。
「真守ってさ···」
小さな、でもちゃんと俺が聞き取れるくらいの声の大きさで話し出した太陽の言葉に耳を澄ませる。
「何でそんなに普通なわけ?俺も浮気くらいって言ったけど、普通俺たちと同じ空間にいるのも嫌になるでしょ?今朝···襲ったわけだし。」
「俺も流石に年下に犯されたのは初めてだよ。年下相手にはなんかほら···負けたくなかったからいつもタチだったし?」
「え、真守ってそんなに遊んでたの?」
「そうだね、今の彼氏と会うまでは暇さえあればね」
そう言うと苦い顔をした太陽。ケラケラ笑ってやるとその表情はだんだんと訝しげになってくる。
「俺、一人だったから寂しかったんだ。それを何とか埋めようとした、そしたら···そうなっちゃって。あの時誰かが違う寂しさの埋め方を教えてくれたなら、今、こんなことになってないんだと思うよ」
「じゃあ···俺も真守みたいに遊んでばっかになっちゃうかな」
「今軽く俺のことをバカにしたよね。まあいいけど。寂しいなら素直に言えば?羽島くんにでも、架月にでも。二人なら絶対に話聞いてくれるし、理解してくれると思うよ」
「真守は?聞いてくれねえの?」
その言葉に微笑むと泣きそうな顔をした太陽。まだ少し濡れてる髪に手を伸ばして撫でてやる。
「俺も聞いてあげる。けど、俺は他の寂しさの埋め方を知らない」
「一緒に探してよ」
「やだよー!面倒だし」
手を離すと嫌だというようにその手を掴んできて強く握られる。
「一人は嫌だ」
「うん」
「誰かと一緒じゃないと不安で···」
「架月がいるよ?」
「違う、そうじゃなくて」
うーん、誰かと一緒じゃないと不安って、それは家族だけじゃ取り払えないってことなのかな。他人にも自分のことをわかってほしいって思ってるみたいだ。
太陽は唇を強く噛んで泣いてたまるか、と言うように涙の張っている目で強く俺を見た。
「今のままじゃ嫌なんだよ」
「うん」
「だから、俺をちゃんと理解してくれる人がほしい」
「···うん」
「俺のこと、わかってほしいんだ」
俺の手に我慢しきれなくなった涙の雫がポタポタと降る。
腕を伸ばし、決してそんな事はないのに小さく見えてしまう太陽の体を抱きしめてよしよし、と撫でてあげると太陽はすぐに涙を服の袖で雑に拭いてニカッと笑った。
「泣いてちゃダメだよな!」
「何で?」
「架月が心配すっから!」
その笑顔は後で自分を苦しめるだけだ。
そんなこと、太陽はとっくに知っているだろうにやめない。
それは架月を不安にさせてはいけないという使命感なのか、自己満足なのか。
「後で苦しいのは自分だってわかってるんでしょ。無理しないでおいたほうがいいよ」
「俺はもういいんだ。それより架月が不安定でいるのが心配」
そして太陽は人のことを心配できる優しくて強い子なのか、自分の問題には目を向けたくない、臆病で弱い子なのか。
きっとどっちとも後者だな、と笑ってる太陽の顔を見て思った。
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