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第206話
酷い音がした。その次には衝撃。
目を開けると親父がそこにいて眉を寄せる。
「燈人、いい加減にしろ」
「何で居るんだ。鍵かけてただろ」
「あんなもんどうにでもなる。お前···あいつをそんなに苦しめてていいのか」
「···わかってる、謝りに行く」
もう親父に報告が回ってるのか。羽島のそういうところは仕事が早くて、いつも頼りになるが、今は嫌だと思う。
眠っていたベッドから起き上がるといきなり胸倉を掴まれた。さすがに腹が立って舌打ちをして睨みつけると、何故な親父が悲しそうな顔をしていて俺の気持ちも落ち着いていく。
「今のお前は謝ったとしてもどうせまた繰り返す」
「···じゃあどうすりゃいいんだよ」
「何もわかってねえお前に謝られたってあいつはどうにも思わねえぞ。ちゃんと考えろ、時間がいるなら羽島に連絡しておけ。」
「時間···」
そんなものがあってもわからない物はわからない。小さく溜息をつき親父から離れリビングに出ると親父と一緒についてきたらしい佐助と錦がいてヒラヒラと手を振ってきた。
それを無視してソファーに座る、親父はそんな俺を呆れたように見ていて、また小さな溜息が出た。
「さっき、時間がいるなら、って言ったが···、お前が迎えに行けないその間にあいつが何をしていようとお前は怒る資格なんてねえからな」
「···何をしてようとって」
「新しい恋人作って幸せに浸っていたとしても、お前は何も言えねえよ」
足音が近くで鳴って、それがだんだん小さくなっていく。
玄関のドアの閉まる音が聞こえたのが最後、何も音がなくなった。
「新しい恋人···?」
あいつに限ってそりゃねえだろ。
けれど不安に思ってしまうのは確かで。
「だからって、すぐに解決できねえし···、っ、」
あー、くそ。
携帯を取り出し羽島にメッセージを送る。
羽島にしばらくは迎えに行けないと連絡を入れて携帯を投げるように置いた。
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