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第217話
夕方になって珍しくキッチンに立つ俺の隣に燈人が立った。
邪魔はしない!と一生懸命野菜の皮を剥いてくれたり···皮というか実の部分も一緒にやってしまってほとんど無いけど。
「野菜切るのは危ないから俺がやるよ」
「俺もできる。これくらい···」
「危ない!左手!一緒に切っちゃうよ!!」
渋々包丁から手を離した燈人は俺の腰に腕を絡めて抱きついたまま離れない。
「今ちょっかい出したら俺の手が血だらけになるからやめてね」
「わかってる」
背中に当たる燈人の額。
ささっと野菜を切って包丁から手を離すと「なあなあ」と声をかけられる、振り返ると突然少し微笑んだ燈人がキスをしてきてびっくりして身を引いた。引いたって言っても腰をがっちりホールドされてるわけだから逃げられるわけじゃ無いんだけど。
「ふっ」
「ふっ···じゃないよ。びっくりするじゃん、ちょっとリビングに行っててよ」
「嫌だ」
「怪我治ったばっかりなんでしょ?さっきあんなことしてて何だけど···痛めるよ?」
「どうでもいい」
腰に巻きつく腕の力が強くなる。
その腕を撫でながら「さて、次の作業···」と鍋を取り出して水を入れた。
「今日の晩飯、何すんの」
「鍋!寒いしね」
「ふーん」
「嫌だった?」
「嫌じゃ無い」
何だか急に甘えたになったな。
でもここからは火も使うし、危ない。と腕の中でくるり、体を反転させて燈人を抱きしめる。
「ちょっと待ってて」
「何で」
「今から火も使うからさ、危ないでしょ。リビングで待ってて?」
「···わかったよ」
嫌そうに腕を離して一人とぼとぼとリビングに歩いていく燈人。その背中を見送って止めていた作業を開始した。
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