23 / 40

第23話 遊ぼうか?★

 武藤さんは今、食後のアイスコーヒーを飲んでいる。   「武藤さんは……ノーマル……ですよね……?」  反応を見ながら尋ねると、武藤さんは頷きながら答えた。 「うん。俺はノーマルだよ」  本人が言うならそうなんかな……  でも、自覚がない場合もあるよな、俺みたいに。  万一、武藤さんがDomだったら俺、やべえよな……  気を付けたほうがいいかな。でも、何を気を付けたらいいんだ?  武藤さんとはそこそこ仲いいし、バイトしてるから会わないってのは無理だしな。  そもそも武藤さんが何者なのかわかんねぇし変に警戒するのもなあ……  もやもやした思いを抱えながら夕飯を食べ終え、誘ったのは自分だからと言って武藤さんが全額出してくれた。  そして、帰る方向が同じなので必然的に俺たちは同じ電車に乗って帰路についた。    七月二十二日土曜日。  明後日から試験期間になる。  レポートやら試験の準備やらで俺は忙しく、シュウさんとはほとんど連絡を取れてない。  向こうから一日に一度は必ずメッセージは来るけど、すぐ返せなかったりしていた。  二週間、シュウさんに会ってない。  そのせいか俺はあの渇きを感じるようになっていた。  やべえなこれ……  午前中はなんにも出来なくて、昼になりやっと動けるようになったものの、レポートはあんまり進んでない。  時刻は夜の七時。   飯食ってレポート進めねぇとなのに……  試験の準備だってしねぇとなのに、動く気力がねぇや……  たばこを吸っても気分は晴れなくて、俺はパソコン前の椅子に腰掛けてスマホを見つめていた。  真っ黒な画面にはもちろん何にも映し出されない。  ……どうしよう、俺。  頭の中にはシュウさんの顔が浮かぶばかりだ。  声聞いたら、少しは違うだろうか。  耳にブルートゥースのイヤホンマイクをつけて、俺はスマホのロックを解除する。  声聞いたら我慢できなくなるかな……  でも、この渇きの方が辛い。これじゃあ試験どころじゃなくなるよな。  悩んでいると、イヤホンから着信を知らせるメロディが流れた。  画面には「秋星」と表示されている。なんてタイミングだよ……!  俺は、驚きつつ震える手で通話をタップした。 「……シュウさん……?」 『こんばんは、今、大丈夫かな?』  やべえ……声聞いただけで俺、心臓バクバクになってる。 「だ、大丈夫です」  答えて俺は、スマホをキーボードの横に置いた。 『二週間近く会ってないから、身体、大丈夫かなと思って』  両耳からシュウさんの声が聞こえてくるとかやばすぎるんだけど。  大丈夫じゃねぇ……大丈夫じゃねえ……でもそれを認めたくない自分がいる。  どう答えていいかわかんなくて黙ってると、シュウさんは苦笑したようだった。 『大丈夫じゃなさそうだね』  その言葉に俺は頷くけど、声には出せない。  辛いって言う? 相手にして欲しいって望む?  何て言っていいのかわかんなくてぐるぐる考えてると、向こうから声がかかった。 『ねえ、漣君。少し遊ぼうか』  蠱惑的な声が響き、俺は思わず吐息を漏らす。  イヤホンで耳に直に響く声はやべぇ……   「あ、遊ぶってどういう……」 『遊ぶは、そのままの意味だよ。ねえ、漣』  名前を呼び捨てにされて、俺の身体がびくん、と震えた。  やべえやべぇ……  イヤホンで名前を呼び捨てにするとかやばすぎだろ?  俺は息を飲み、シュウさんの言葉を待った。 『服を全部脱いで』 「わ……わかり、ました」  考えるよりも先に口が動く。  俺は椅子から立ち上がり、Tシャツとハーフパンツ、それに下着を脱いだ。  ひとり暮らしだし、カーテンをしてるから外から覗かれることはない。  なのに、めちゃくちゃ恥ずかしい。 「ぬ、脱ぎました……」 『じゃあ、漣、「お座り」』  言葉に反応して、俺は床にぺたり、と床に座り込んだ。  たったそれだけで息が上がってくる。  これ、絶対向こうに聞こえてるよな…… 『そこで足を開いて、ペニスはどうなってるか教えて?』  言われた通りに足を開き、俺は股間を見下ろした。  ペニスは半勃ち状態で、先走りが出始めている。触ってもいねぇのに何なんだよ…… 「……半、勃ちです」  何とか言えたけど、死ぬほど恥ずかしい……  絶対今、俺は耳まで真っ赤だろう。 『聞いててあげるから、そこで自分でしてみて』  ま、まじかよ?  これ、見られるより恥ずかしくねぇ……? 「わ、わかりました」  恥ずかしさに震える声で答えて、俺はティッシュを掴みそっとペニスに手を添えてゆっくりと扱き始めた。 「あ……はぁ……ハァ……」 『さすがに、玩具はもってないよね』 「も、持ってない、です……あっ……」  ここ二ヶ月、自分でやっても全然勃たなかったのに、俺の手の中でペニスは徐々に硬さを増して、先走りが溢れて俺の手を、ペニスを濡らしていく。 「う、あ……」 『硬くなってきた? どうなってるか教えて』 「ん……硬く、なってきて……はぁっ……先走りが、すごい……」  これ、目の前で見られるよりも恥ずかしい。  だって、逐一どうなってるのか言わなきゃいけねーんだから。  きっと電話の向こうでシュウさんは、顔色ひとつ変えずにいるんだろうな……  彼の目を思い出し、俺はどんどん手の動きを早めていく。 「う、あぁ……キてる……キて……あン」 『あれ、もうイきそうなの?』  笑いを含む声で言われ、俺は頷く。  快楽の波は腰から這い上がり、全身を飲み込もうとしてる。 「ヤバい……シュウさ……イく、イくぅ……!」 『随分早いなあ。もう少し我慢させたかったけど』 「そ、んな……ムリ、む……」  頭が、イきたい、って言葉で埋め尽くされていく。 「シュウ、さ……イきたい、からぁ……」  ベッドに背をもたれ、俺は手の動きを早めていく。  イヤホンの向こうで、シュウさんの吐息が聞こえてきて、そんなんでも俺は嬉しくなって彼の名を繰り返し呼んだ。 「しゅう、せいさん……出したい……もう、ムリぃ」  言って欲しい。  イっていい、って。  俺はペニスの先端を指でわり、鈴口をひっかく。 「ふ、あぁ……イきたい、からぁ……」  『わかったよ漣、出していいよ。たくさん声出して、僕の名前を呼んでイくんだよ?』  許可が出て、ギリギリで堰き止められていた快楽の波が一気に脳まで駆け上がっていく。 「ひ、あぁ……シュウさ、ん、出る、出る! しゅう、せいさ……」 『出して、漣』  その声と同時に、俺の頭と視界が真っ白に染まった。 「ふ、あぁ!」    びくびくとペニスは脈打ち、精液がペニスに被せたティッシュを濡らしていく。 「はぁ……はぁ……」  イっちゃった……  名前呼びながら俺……  充足感と射精感に浸りながら、俺は荒い息を繰り返した。   『漣』 「あ……」 『ちゃんとできたみたいだね』  イくの聞かれて死ぬほど恥ずかしい……  だけど、褒められて嬉しくて、満たされてる俺がいる。  もっと褒められたい。  もっと感じたいのに…… 『漣』 「は、え、はい!」 『夏休み、ちゃんと荷物持ってうちに来るんだよ。また、連絡するから』  夏休み……そうだ、俺、シュウさんちに住むんだっけ。  俺は承諾した記憶がねぇけど、シュウさんいわく、住むとか自分で言ったらしい。  録音があると言われたけど、聞いてはいない。そんなん恥ずかしくて聞けるかよ? 「わ、わかりました。あの……」  言いかけて、俺は止まる。  ――会いたい、て言葉がでかけて俺はそれを飲み込んだ。  会ったら絶対耐えられなくなるだろうし、課題が終わんなくなる。それはまずい。 『漣君』 「……はい」 『また、電話で「遊ぼう」か』  会わなくても、電話でだいぶ満たされてる。だから俺はでかけた言葉を飲み込んだままにして、 「はい」  と、返事をした。

ともだちにシェアしよう!