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第24話 レポート終わらねえ
試験期間中、一度、シュウさんから電話が掛かってきた。
それまでに俺は悩んだ末に吸盤で床に固定できるディルドとローション等を買い、シュウさんに言われるままそれを使うことになった。
まさかあんなもん自分で買うとは思わなかった……
さすがに一回しか使ってねぇけど、シュウさんに言われるままにヤるのはめちゃくちゃヤバくてすぐにイってしまった。
おかげで渇きは大して感じなくて済んだけど……会いたい欲求は溜まる一方だった。
なのに。
七月二十八日金曜日。時刻は五時を過ぎている。
俺は、人影の少ない講義室で、タブレットに向かってため息交じりに呟いた。
「課題終わんねぇ……」
記述試験が全て終わり、あとはレポート提出のみとなったけど……
あと二つ、課題を終わらせねぇといけないのに終わんねぇ。
家に帰っても進まねぇだろうから大学に残ってやろうって決めたんだけど、終わんねぇものは終わんねぇ。
講義室には俺みたいにレポートをやっている学生が何人かいて、時々喋り声が聞こえては来るけど基本静かなものだった。
「あー、俺もまだ終わんねえわ」
俺の隣に座るヒロは、ノートパソコンを開いてカタカタとキーボードを叩いている。
「お前あとどんくらい?」
タブレットから顔をあげずに問うと、ヒロは唸ってから言った。
「えー? あー……ひとつは半分くらいで、ひとつはあとまとめ書くだけ」
「俺より進んでるじゃねぇか」
「半分がなげえっての」
それはわかるけれども。
俺はふたつとも半分いってない。
おかしい……余裕もって書き始めたはずなのになんで終わんねぇんだ……?
提出は来週だし、なんとかなるとは思うけど……なるよな、いやなれ。
念のため日曜日のバイトだって三時間しか入れてねぇし、締切日までプールのバイトは……やべえ、明後日からだ。
日曜日の朝からプールバイト初日じゃん。小学生とかはもう夏休みだから土日のどっちか出て欲しいって言われて、一日にふたつバイトいくことになったんだった。
プールバイトは午前九時から三時までで、量販店は夕方の六時からだ。
レポート終わるかな……ちょっと心配になってきた。
締切りは八月一日だし、提出はメールだから大丈夫……終わる終わる。
そう自分に言い聞かせて、俺は作業を続けた。
結局終わる訳はなく、七時になり俺とヒロは片付けをして校舎を出た。
外はすでに暗くなっていて、空にはわずかに星が見える。
「なあ、一緒にやったら終わる気しねえ?」
門へと向かいながらヒロがいいこと思いついた、みたいな顔で言い出し、俺は小さく首を傾げた。
「そーかー?」
「通話しながらとかできんじゃん? 別に家に集まる必要もねえんだし」
講義室で二時間くらい一緒にやったら、まあまあ進んだのは事実だけど。
無料で音声チャットとか動画チャットできるしな。
……そう言えば、シュウさんとの通話、二回とも音声だけだったけど、動画チャットって言い出さなかったな。
何でだろ?
「明日、気が向いたら連絡するわ」
「え、あ、え?」
なんの話だっけ、と思いヒロの顔を見てすぐにレポート一緒にやろうって話だと思い出す。
不思議そうな顔で俺を見るヒロに対して、俺は何考えていたのか誤魔化そうと頷きながら言った。
「えーと、うん、わかった。俺も気が向いたら連絡するわ」
友達と一緒だってのに何考えてんだ、俺。
「だから俺より早く終わらせるなよー」
と、笑いながらヒロが言うので、俺はあとどんくらい残ってるのか思い出し首を振った。
「終わるわけねえだろ」
残念ながらまだ先は長い。
そんなこと言っている間に門に着き、ヒロとは帰る方向が違うためすぐに別れ、俺は駅へと向かう。
メシ買って行かねぇとなあ。スーパー寄って行くかぁ。
そんな事を考えつつ駅につくと、ちょうど数分後に出る電車があり、俺は急いで駅構内に入った。
電車に飛び乗ると、すぐに発車メロディーが鳴り響く。
あー、良かった、乗れて。
金曜日の夜のせいか、車内はどことなく疲れた空気が流れていて、静かだった。
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