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第31話 ひとりで★

 その日の夜。  夕食を食べた後、当然のように「プレイ」が始まる。  明日、月曜日は俺もシュウさんも仕事が休みだ。  一緒に暮らして初めて休みが被る日。  だから今日は遅くまで起きていられる。  今日は何をするんだろうか?  風呂に入った後、俺は裸のまま寝室の床に座り、後ろで手首を縛られてベッドに座っているシュウさんを見上げた。  俺が裸なのに対して、彼は半袖の寝間着姿だ。  そして、その手には俺が買った吸盤付のディルドが握られている。 「ねえ、これ、何回使ったの?」 「シュウさんに言われた時しか使ってないです」  ひとりで使う勇気なんてあるわけがない。  シュウさんはその玩具を撫でてにこっと笑い、言った。 「今日はこれでひとりで遊ぼうか? 僕がいいって言うまで、イかないようにね」  そして彼は立ち上がると、俺の半勃ちになっているペニスに手を触れて、その根元にリングをつけた。 「あ……」  リングがひんやりとしていて冷たい。  ひとりで遊ぶ、の意味は理解できるけど、いいって言うまでイくなってどういう意味だ?  シュウさんは俺に見せつけるように、玩具にローションを絡めると、床にそれをセットしてベッドに腰かけた。 「ほら、自分でやってみせて?」  言われて俺は、玩具に視線を落とす。  床に生えたそれは、ローションにまみれてイヤらしい。  俺は息を飲み、腰を上げ膝立ちで前に出て、ディルドの上に跨る。  そして、そこにゆっくりと腰を下ろした。  俺の尻穴が、ずぷり、と先端を飲み込んでいく。 「う、あ……」  そこで動きを止め、俺は下を俯いた。  まだ全部入りそうにない。 「漣」  シュウさんの、冷たい声が響く。  その声に心臓が鷲掴みにされるような感覚を覚えて俺は、目を見開いて顔を上げた。  眼鏡をかけていないシュウさんが、無表情に俺を見ている。 「まだ入るでしょ?」 「あ……あぁ……」  確かに、家でシたとき半分以上入ったから、もっと入るだろう。  俺は、シュウさんの顔を見ながらゆっくりと腰を下ろすと先端が前立腺に当たり、びりびりとした感覚がそこから背筋を這い上がる。 「ひ、あ……中、当たって……」 「何が当たってるの」  わかるだろうに、シュウさんは意地悪く聞いてくる。 「おも、ちゃの……先端が……前立せ……あたって……」  息も切れ切れに言うと、シュウさんは足を組み、膝に頬杖ついて言った。 「ならもっと入るよね、漣?」  その言葉に俺は小さく頷き、俺は腰を下ろしていく。  玩具はぐりぐりと俺の内壁を刺激して、ガチガチになったペニスをリングが締め付ける。   「あ、う……」 「ほら、もう少しだよ、漣」 「ん、あぁ……お、奥まで……入っちゃう」  俺はシュウさんに見られながら腰を埋め、ディルドを飲み込んだ。  やばい……深い、これ…… 「シュウさん……すごいぃ……」 「あはは、トロ顔して可愛いね、漣。ほら、次は腰を振ってみて」 「ひ、あ」  ぎりぎりまで腰を浮かせて一気に腰を埋めると、俺の視界に星が散る。  口の端から唾液が流れ、息が、声がとめどなく溢れていく。 「シュウ、さん……シュウ、さ……」  ペニスを戒めるリングが苦しい。  イきたい。イきたいけど、さっきシュウさん、いいっていうまでイっちゃだめだって言ったよな……?  イかないように意識を繋ぎ止め、俺は身体を揺らし続けた。 「あはは、ペニス、パンパンになってきたね」  シュウさんが足の指で俺のペニスを撫でる。 「う、あ……」  ペニスがびくんびくん、と脈打っていて今リングを外されたらすぐに射精するだろう。 「もう少し頑張ってみようか? ディルドが気持ちいいところに当たるようにしてみて」  言われて俺は、腰を浮かせて先端が前立腺に当たるようにして腰を振った。  気持ちいい……中、気持ちいいよぉ。  やばいこれ、頭変になる。  動くたびにローションの水音がすごい。 「イきたい、よぉ、シュウさぁん」 「じゃあ、リングをつけたままイっていいよ」  許可が出て、俺は腰の動きを早めていく。   「う、あ……クる、キちゃう、から……イくぅ、イくイく」  俺は上ずった声で繰り返し、奥まで腰を埋めたときがくがく、と身体が震えた。  頭まっしろ……  出してないのにイっちゃった……  ディルドを飲み込んだまま呆然としていると、頬に手が触れた。  ぼんやりとした視界に、シュウさんが顔が映る。彼は俺の頬を両手で挟み、顔を見つめて言った。 「ねえ漣。首輪はまだ早いかなと思っていたんだけど、君が誰の物かわかるように何かつけようか?」 「……首……わ……?」 「首輪をしたいのが本音だけど、外でできないし……ドッグタグがいいかな。それなら外でもつけていられるし、君が誰の物かわかるから」  ドッグタグ……首輪……  だめだ、頭回んない。 「僕がいい、って言うまでイかなくて偉かったね」  イくの我慢すると褒められる。  頭を撫でられながら俺は、そのことを意識に刻み付けた。

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