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ぬるり、と悩ませていたものの感触に驚き、とっさに上げた。 汚れてしまった。 どちらにせよ、シャワーを浴びなければ。だが、体力を消耗したものだから、なかなか動けない。 と、その時、ふと気になることがあった。 そのぬめりの次に、固い感触が当たったことに。 急いで振り返る。と、我が目を疑った。 スーパーでよく見る形状の真っ白な卵が転がっていたのだ。 昨日買ってきた覚えはないし、寝ぼけてベッドに転がしたってことはないだろうし、そもそもあったとしても、寝相で卵が無事なはずがないし。 何よりも、朝日に照らされた卵の湿り具合がなんとも産みたてほやほやというような気が。 思考停止。 「⋯⋯僕が産んだって、こと?!」 それはおかしい。 鶏やら亀やら蛇やらではない、ましてや人間のオスなのだから、肛門から産むなんてことは、生物学的にありえない。絶対にありえない。 ならば、何かの病気なのかと枕元に置いていた携帯端末で検索をかけてみたが、一つもそれらしいものがヒットしない。 ドッドッドッと、鼓動が速まる。 この状況、どうしたらいい。 緊張と非現実な出来事を目の当たりにして、思考がまとまらない藤田に、手に持っていた携帯端末から二度目のアラームが鳴る。 そこで思考がクリアになった藤田は、大慌てでシャワーを浴び、身支度を整え、再びベッドに転がしたままの卵を見た時、あの友人に見せてやろうと手に取って、家から去っていった。

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