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「俺、病気のことに詳しくないけどさ、こういう病気ってあるのかね」
「すぐに調べてみたけど、それらしいものが見つからないんだよね⋯⋯。だから、病院に行こうにも行けないんだよね⋯⋯」
「ふーん⋯⋯そうか⋯⋯」
今度は真剣な眼差しで見つめていた。
高校の頃からこの横顔を密かに見るのが好きだった。
今のように、人をからかっているかと思えば、ふとこのような表情を見せるのだから、胸を打たれずにはいられない。
その頃から、友人とは違う感情が少しずつ芽生えていったのだろうと思う。
けれども、この気持ちを伝えてしまったら、この関係性が崩れてしまう。だから、ずっと胸にしまったまま。
この先もこの関係を保っていればいい。これ以上何かを望んでしまうなんて、欲張りだ。
「⋯⋯後で割ってみるか」
「⋯⋯朝、バタバタしていたからやり損ねたけど、僕もやってみたかったんだ」
「⋯⋯なんというか、仮にも腹痛めて産んだモンに対して雑じゃね? 大切に暖めようとは思わねーの?」
「⋯⋯何か孵ったら、それはそれで嫌なんだけど⋯⋯」
と言いつつも、あの卵から何が孵るのだろうと考えていた。
ヒヨコが孵ったらどうしようか。メスであれば、将来的に無精卵を産んでくれて、最近卵不足となっているニュースをよく観るものだから、かえって食べたくなっている欲を満たしてくれるだろう。
何かが孵らずとも、自身が産んだ卵が無精卵であっても、この際もういいやと開き直る。
そのようなことを考えているうちに、だんだんと楽しくなってきた。
黄丹が言っていたように、あんなにも痛めて産んだものだから、大切に暖めた方がいいかもしれない。
だが、中身も気になる。
そう思い至った藤田は、早く講義が終わらないかなと思っていたのであった。
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