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講義中、黄丹は内容をノートに取りつつも、調べ物をしているような仕草をしているのを目で追っていた。 「⋯⋯そこまでしなくても」 つい、そう耳打ちをすると、「⋯⋯気になって」と返した。 「もしかしたら、何かしらの動物の生態と似ていたとしたら、それから対処できるかもしれないと思ったら、調べる手が止まらなくてな」 「⋯⋯教授に見つかっても知らないよ」 「⋯⋯そしたら、志朗がどうにかしてくれ」 「⋯⋯え、なんで僕が⋯⋯」 文句が垂れるが、忙しいと言わんばかりに藤田から目を逸らした。 そんな態度に、声を出さずにため息を漏らした。 この状況を面白がっているのか、それとも、彼の好奇心もあるかもしれない。 講義も同じ熱量で受けて欲しいのだけど。 半ば呆れた藤田は、もう知らないと教授に耳を傾けた。 それからしばらくしてからだろうか。 腹痛を覚えた。 しかし、その腹痛はある日の朝の時に感じた例の腹痛だった。 「⋯⋯っ」 シャーペンを持つ手に力が籠る。 だめだ。何も出来ない。 「⋯⋯志朗? どうした?」 出さないようにしていたが、隣で呻く声で気づいたようだ、黄丹が背中に手を回す。 その手が嬉しいと、この激痛がなければ思うだろう。今はそのことを思う余裕がなかった。 「⋯⋯もしかして、産みそうなのか⋯⋯?」 「⋯⋯ん、⋯た、ぶ⋯⋯っ」 会話をするにも一苦労だ。これで伝わったのかと思っていると、「⋯⋯分かった」という言葉が返ってきた。 少し安心していた。その束の間。 「すみません、藤田が具合悪いみたいなんで保健室に連れて行っていいですかね?」 教室に響かんばかりに言う黄丹に、一瞬腹痛のことを忘れ、恥ずかしさが込み上げてくる。 そう思う間もなく、「あー、行ってこい」と何ともない声で言う教授に「あざっす!」と言って、「ほら、行くぞ」と黄丹の肩に手を回された。

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