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「一つ、考えていることがあるんだけどさ」 深く考え込んでいたらしい、いつの間にか下がっていた顔を上げると、黄丹と目が合った。 「どんなモンが入っていても、所詮無精卵で、それはイコール受精していないからだ。で、どの動物界にも共通する俺の精子と上手く受精できたら、有精卵になるんじゃないかと思って」 「⋯⋯え、それってつまり⋯⋯」 「セックスだな、セックス」 「⋯⋯せ、セックス⋯⋯」 黄丹がくどい言い方をしていた時点で分かってはいたが、そのことを理解したくはなかったのだ。 「え、てか、セッ⋯⋯クスをしてどうするの? それで産まなくなる原因が探れると思っているの? というよりも僕とすることに抵抗はないの?」 わけが分からないと矢継ぎ早にそう言うと、「分かった! 分かったから、説明させてくれ」と落ち着けと手で制される。 落ち着いていられるか。 「まずその考えに至ったのは、その僅かな希望を信じようと思ったからだ。お前が産みたい欲があって、無精卵を産んでいるとしてたら、有精卵にしてやってたら、それが解消されるかもしれない。あと、俺が見てみたいだけもあるが」 あとと言った方のが、本音なんじゃないかと疑いの目を向けているが、黄丹は知らんぷりなのか、話を続ける。 「それとお前とセックスすることに抵抗はなくはない。だって俺、女ですら抱いたことがねーですもん! 男なんてどうすればいいのか分からねー!」 わざとらしく騒ぐ黄丹に、落ち込みそうになった自分が馬鹿みたいだと鼻で嗤っていた。 黄丹は大学デビューしたのだから、今度こそ彼女を作りたいと息巻いていて、一時期友人らと合コンに行ってはお持ち帰りをしようとしたらしい。 が、一晩の関係にも至らず全敗で、今は藤田がこのようなことをなってしまったのもあって、そういうことも断っているようだ。 そう聞くと自分のために尽くしてくれて、黄丹のハジメテももらえると思うと嬉しくはあるが、恋人でもないのにいきなり身体の関係になるのはどうなんだと思うと、嫌気が差した。

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