15 / 47
15.
「でさ、いきなりそういう関係になるのは面白くないから、他の動物のように求愛行動からしてみようぜ。まあ、いわゆる恋人ってやつ」
悶々と考えている藤田を呆気なく覆すことを言ってきた。
「は? えっ、何て言ったの?」
「恋人だって。けど、一時だけだから擬似恋人だけど。嫌ならいきなりセックスから始めるけど」
「いや、嫌も何も⋯⋯」
どういう反応をしたらいいのか。願ったり叶ったり、ということでもないような。
擬似でも、恋人らしいことをできるのを嬉しいと思わないといけないのか。
「で、志朗。いいだろ」
「うん⋯⋯いいよ」
「なんだよ、あまり乗り気じゃねーじゃん。セックスに不安があるなら、セックスする時までにテクニックを完璧にしておくぜ。最高に気持ちよくなって、最高の卵を産もうな!」
表情も最高の笑顔を見せつけてくる黄丹が眩しくて、目を細めた。
本当に黄丹は目的のためならば、擬似でも藤田と恋人となることに何も躊躇いがないようだった。
こんな調子で、抱かれて嬉しいと思うのか、それよりも恋人っぽくときめいたりするのか。
様々な不安を抱えたまま、この話は終わりだと思わんばかりに食事を再開する黄丹に、「カツもーらい!」と取られても、ぼんやりとするだけだった。
ともだちにシェアしよう!