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午前の講義が終わり、昼食を摂ろうと食堂へ向かった。 「今日は何食べようかな」 「俺は米だけでいいや」 サバ定食に目が映っていたのを、すかさず隣に映した。 「えっ、どうして」 「ちょっと節約したくてな。ついつい財布の紐が緩みがちになるもんだから、きつくしようと思って」 「だからって、これからお米だけ食べていくつもり? 体に良くないよ。僕、サバ定食を頼むから、半分と味噌汁あげる」 「そんなにもらえねーって」 「いいから、遠慮しないで」 「ほら、行こ」と受け取らない気でいる黄丹の背中を押して、注文し、頼んだ料理を受け取ると席に着いた時に強引に渡した。 「なんかおかんみてぇ。ありがたく受け取るわ」 そう言って食べ始める黄丹に、やっぱあげて良かったと続けて食べ始めた。 「友達としてから一緒に食べているけど、ふとした時に俺達恋人なんだなって思うと、雰囲気変わんね?」 サバを一口に切り分けようとした箸を持つ手が止まった。 「何、いきなり。また不意にときめかせようとしてる?」 「そうに決まってる。その一縷の望みにかけているんだからさ」 「まあ、そうだけどね」 「じゃあ、ちょうどいいところで切り分けているそのサバを、俺に食べさせてみてくんね?」 半ば理解するのが遅れた。 「えっ、それってあーんってこと?」 「おう、そうよ。恋人らしいだろ?」 「けど、ここ⋯⋯人の目があるし⋯⋯」 「まだ気にするか⋯⋯。こういう時、案外人ってモンは見てないものだって」 ほぉら、と促すように自身の口を指差す。 そんなことを言われても。 ちらり、ちらりと、周りを見る。 黄丹が言うように言うほど周りはそれぞれの輪の中で夢中になっており、こちらのことを見ているような視線を感じられない。 藤田がいつまでも躊躇していても、やるまで黄丹はずっとこのままだ。 だとしたら、やることは一つ。

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