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「ええい! ままよ!」
「んぐっ!?」
黄丹の半開きのところを狙って押し込んだ。
まさか「あーん」と言わずにそんなことをされるとは思わなかった黄丹は、むせそうになりつつも、ゆっくりと咀嚼して流し込んだ。
「⋯⋯ちょ、おま⋯⋯っ、殺す気か⋯⋯!」
「ご、ごめん⋯⋯恥ずかしさで勢いが⋯⋯」
「ムードもクソもねーな」
持参していた飲み物でひと息する黄丹に申し訳ないと、小さくなっていた。
「ったく。じゃあ、俺もやってやるよ」
「えっ」
「ほら、あーん」
一口に切り分けたサバをこちらに向けた。
一瞬躊躇ったものの、おずおずとそれを口に含み、ゆっくりと咀嚼した。
「どう? 自分で食うよりも美味く感じるだろ?」
「⋯⋯ん⋯⋯うん⋯⋯」
それよりもどことなく緊張していて、ちゃんとサバの味がしない。
「なんだよー。結局ときめかないのかよー」
身を乗り出していた黄丹は、椅子にもたれかかった。
「やっぱり、場所が悪いんだって。せめて二人きりになれる所だったら、もしかしたら⋯⋯」
「そうか、じゃあ今度やってみっか!」
意気揚々とバッグからノートを取り出すと、何やら書いていた。
「何してるの」
「今言ったことをメモしておこうと思って」
「そんなメモをするほどのものじゃなくない?」
「いや、やってみる価値はあるだろう。どこでちょっとでもときめくのか分からないわけだし」
「まあ、そうだよね」
言いながらノートをカバンに戻した黄丹が食事を再開したのを、一緒に食べ始めた。
「そういえば、そろそろテストだよね」
「やっば。卵を産む病気のことを熱心に調べていたせいで、大して勉強してねえ!」
「そうじゃなくても、元々ちゃんとしてないよね」
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