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30.

ふっと、目を開ける。 ぼうっとしていたのも束の間、卵を産むことに疲れて眠ってしまったのだと思い返し、身を起こす。 変な体勢で寝てしまったものだから、体のあちこちが痛い。 ゆっくりと体を解し、ひとまずはと立ち上がろうとした時。 コンッと、足先に何か当たったことでそういえば、産み落とした卵を放置したままだったことを思い出し、背後にあった卵を見やる。 一個は初めて産んだのと同じ形状のもので、もう一個はそれよりも一回り大きい薄茶色の卵だった。 「⋯⋯我ながら立派なものを産んだな」 手に取って、思わずしげしげと眺めた。 そして次に、やや重みを感じることから、中身があることに気づいた。 「⋯⋯割ってみよ」 どうせこれから先も黄丹と話すことはないのだから、産んだ自分が何しようが勝手だろう。 ⋯⋯これから先も? ずきっと胸が痛んだ。 何もそこまでそう思う必要はないと思うが、自然とそう思ってしまうだなんて、自分はそこまで怒っていたのか。 「⋯⋯」 とにかく今は、と風呂に入り、さっぱりした後、産んだ卵のうちの白い方を手に取る。 実家にいる時から手に馴染んだ形状で、およそ自分から産んだとは思えないものだった。 どことなく緊張している己に落ち着けと念じ、角に卵を当てる。 パカッと深めの皿に出てきたのは透明な液体だった。 前、黄丹の前で産卵した中身のようだが、ネバネバというよりもサラサラに近かった。 それこそ、黄身のない白身のような。 恐る恐る皿の縁に口をつけ、一口飲んでみた。 やはり、白身のようで子供の頃から馴染みのある味が喉を通った。 「じゃあ、こっちは?」 薄茶色も同様に割って、さらに出してみる。 すると、黄身が出てきた。 嘘でしょと、じっと見た後、先ほどの白身だけのを再び見る。 結果的には無精卵で、そのことに関してはホッとしたが、何故分かれたのかは考えても分からない。

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