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それはあるかもしれないが、何よりも。 「玄一が、僕のために作ってくれたから、それだけでも嬉しくて⋯⋯」 目を細めて笑う。 と、途端、何故か黄丹は頬を赤らめた。 藤田は、え、という顔をした。 そんな反応を見せるだなんて、まるで⋯⋯。 「そ、そっか、嬉しいことを言ってくれるな。じゃあ、遠慮せず食えよ」 「う、うん⋯⋯」 自然と、「あーん」をしてくる黄丹に素直に応じて、雛鳥のように食べる。 「学食で食べている時は恥ずかしがっていたのに。なんだ、二人きりだからいいのか? それとも、熱で甘えているのか?」 「⋯⋯どちらとも言える」 「あー⋯⋯そうか。まあ、いいけどな。恋人らしい⋯⋯あ」 急に声を上げるものだから、肩を揺らした。 「何、いきなり」 「⋯⋯あ、いや⋯⋯。あの時、それが原因で俺に会うのを嫌がっていたからなって。⋯⋯悪いな」 「⋯⋯別に、もういいよ。僕も無視しちゃってごめんね」 「⋯⋯ん」 嫌っていた時とはまた違う気まずい雰囲気が流れ、どちらともソワソワしている気配を感じ取った。 場が持たない。 「あ、そういえば。玄一は、なんで僕が具合悪いって知っているの」 「え、あ、それはだな⋯⋯。お前のことを話している友達から聞いたから。だって、ここ一週間まともに返信してこねーから、俺から何か言っても意味ないなと思ってな」 「⋯⋯返す言葉もございません」 「ま、それも元はと言えば、俺が原因だからしょうがないけど」 何気なしに口では言うが、表情は罰が悪そうにしていた。 あの時のこと、本当に反省しているんだなと思うと、あの時の過ちをなかったことにしたい気持ちになった。 「こういう時、互いの合鍵を持っていて良かったと思うぜ。何かあったら、すぐに行けるし」 その言葉でそういえば、黄丹に互いの鍵を渡していたことを思い出し、ふっと笑みが零れた。

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