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「お前にそう言われた時、あの時の⋯⋯俺が無理やり抱いた形になったあの時、志朗のことが好きなのかと問われたのを思い出した。お前は実験として恋人になるのではなくて、本当として恋人になりたかったんだな」 小さく詫びる彼に、「でも、僕とそういう関係になるのは迷惑でしょ」とぼそぼそとした口調で返す。 胸を痛めながらも。 すぐに「そうだな」と肯定的な言葉が返ってきた。 ああ、やっぱり。 しかし、その言葉には続きがあった。 「お前とは高校の時、友達になって、俺の馬鹿らしいことに付き合ってくれて、なんだかんだ楽しくて、気が合うと思っていた。⋯もしかして、その頃から俺のことそういう目で見ていたのか?」 その問いに蔑む目も加えて見てくるかと思っていた。が、真剣な眼差しに思え、気づけば頷いていた。 「⋯⋯なるほど。じゃあ、あの玉子焼きもそういうことだったのか」 独り言のように呟いた言葉に、気づかれてしまったと思った。 「⋯⋯やましい気持ちで、いつも玉子焼きを玄一にあげていたんだ。⋯⋯ごめんね」 「いや、そのおかげで、どうしてお前が卵を産んでいるのか、仮定から証明に変わった」 それって、どういう。 そんな表情をしていたのだろう。目が合った黄丹がこう言った。 「俺にいっぱい玉子焼きを食べさせたくて、自ら産んだんじゃね?」 理解するのを一瞬拒んだ。 が、分かってしまった直後、思わず飛び上がる。 「えっ、そんな理由で、卵を産む羽目になったの?」 「ありえないと思うが、ありえなくはないな」 「⋯⋯いや、どっちなの⋯⋯」 誤魔化すように、もしかしたら藤田の大したことのない突っ込みを面白いと思ったのか、笑っていた。 藤田は笑う気力なんてなく、急に疲れが押し寄せ、ベッドに倒れ込んだ。 そんなことで、奇妙な病気のようなものにかかるものなのだろうか。 何度考えても、黄丹が仮定していたというものに理解が追いつけなかった。

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