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相合傘(赤坂 side)

ゴールデンウィークが明けた。ただでさえ休み明けでだるいのに、いきなりテスト三昧だった。勉強もしてなかったから、絶対成績が悪そうだ。 長い授業が終わり、背中を丸めて家へ向かう。周りのやつらは楽しそうに下校している。いいよなぁ、元気で。思わずため息が出た。 程なくして、天気の神様が俺の心を読んだのか小雨が降り始めた。 「マジかよ……」 あいにくの雨で、傘を持っていない。土砂降りではないためなんとか帰れる程度だが、眼鏡に雫が当たって鬱陶しい。俺は鞄を頭に乗せ、早足でさらに歩みを進めた。駅までまだ時間がかかる。チッ、学校の近くに駅作れよな。グチグチと心の中で呟いていると、後ろから声がした。 「赤坂」 振り返ると、クラスメイトの黒井がいた。こいつと話すのはあの事件ぶりか?相変わらず整った顔立ちで俺を見つめている。 「黒井」 「傘、持ってないの?」 「ああ、今日は災難だぜ」 すると、黒井は心配そうにつぶらな瞳を向けて傘を差し出した。 「風邪引いちゃうから、僕の傘使って!」 「ええ!?それは悪い、黒井が風邪引いてしまうって!」 「なら……半分だけでいいから使って?」 ほんの少しだけ首を傾げる黒井。おいおい、こんな姿を見たら、女子生徒はみんな倒れるぞ。つか、これはまさかの相合傘じゃないのか……?一緒のベッド事件といい、黒井は男同士でそういうの平気なのか? 「わかった……あ、ありがとう」 断り続けるのも失礼だと思い、俺は彼の言葉に甘えることにした。黒井の傘は折り畳みのものだったため、普通のよりも小さい。そっと身を寄せても、肩が少しだけはみ出てしまう。肩と肩がぶつかりそうになり、ぎりぎりのあたりで必死に平然を装っていた。 「タオル、よければ」 「サ、サンキュー……」 眼鏡を外し、差し出されたタオルで顔を拭く。どんだけ用意がいいんだ黒井は。微かに香る黒井の匂いが体に染み渡る。肌触りもいい。あの時、一緒のベッドで寝ていた感覚を思い出す。……って、だめだ俺、何やってんだよ……! とあれこれ考えていると、ふと隣から視線を感じた。 「……ん?どうかした?」 「ううん。何でもない」 しとしとと傘に雨粒が当たり、ほんのりとアスファルトの匂いが鼻を刺す。何を話せばいいかわからずしばらく黙っていたが、静寂に耐え切れず、とうとう俺から口を開いた。 「あの、さ……黒井はこの辺に住んでるのか?」 「うん。赤坂はここから少し離れてるんだよね?」 「ああ。電車で30分くらいかかるかな」 そう答えると、再びしんとした空気に包まれた。ちらりと横を伺うと、黒井は前を真っ直ぐ見ていた。長いまつ毛はまるで人形のようで、滑らかな白い肌は一際目立っている。こんな状況、男の俺でもドキドキするじゃんかよ……。 それから俺達は、何も言わずただひたすら帰路についていた。途中で雨が止んでいたにも関わらず、どちらもそのことには触れず、傘を差したままくすぐったい距離を保っていた。

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