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梅雨と赤坂(黒井 side)
傘も差さずに雨に打たれ、いざ教室へ。当然、みんなびっくりしてた。でも一番乗りで心配してくれたのは、僕の愛しい赤坂だった。まるでピンチを救ってくれる王子様だ。少女漫画を読んでいるような気持ちになった。こんなロマンティックなこと、本当に起こるんだ……!
しかもその後、赤坂が体操服を貸してくれることになった。赤坂の、服……?もちろん、赤坂も着たことあるやつだよね……?赤坂の服を着れるだなんて……考えただけでハスハスしてしまう。ああ、早く赤坂の匂いを堪能して一体化したい。ごちそうさまだよ赤坂ぁ!!
赤坂の腕に引かれて早歩きをする。だけど待って僕の王子様。僕は今歩きにくくて……。その様子を素早く察知した赤坂は、何と僕をお姫様抱っこしてくれた。
「うわっ、あっ、赤坂っ!」
「悪い、けどお前が滑って転んだら危ないから」
軽々と僕を持ち上げる。ガラスの靴が脱げたことに気づき、僕を抱え上げてくれる王子様。もう好きが溢れて止まらない。とにかく赤坂にしっかり抱き着き、彼の香りを体全体で感じた。
しかも赤坂は着替えも手伝ってくれた。僕の裸、赤坂はドキドキしてくれたかな?見せる僕は恥ずかしかったけど、赤坂の指が体に触れる度に諸々が反応しちゃったんだ。ズボンのベルトを外してもらう時は特に。敏感なところに優しく触れられたら、もう……。このまま美術室でセックスしようかと思った。
なのにいいところでチャイムが鳴った。国語のテストなんてどうでもよかったけど、赤坂がテストを受けられないのは可哀想だったから仕方なく我慢した。でも体操服から香る赤坂の匂いで僕は満たされた。この匂いどうやって保存しようかな。肌身離さず持っていよう。彼の香りを身に纏《まと》いながら、また腕を引かれて走っていった。
教室に着いたら、やっぱり先生は怒ってた。悪いのは僕。赤坂は助けてくれただけ。赤坂は悪くないもん!反論しようと思ったら、いつの間にか丸くおさまってた。何でだろ。あんまり周りの話聞いてないからわかんないけど、きっと赤坂が優秀だから許されたんだよね!うん!
朝から幸せな時間を過ごせた。昼休みはウキウキな気分で空き教室に入った。
「凉音!危ないのです!風邪を引いたらどうするんですかっ!」
流石のリオンも、この日ばかりは僕の行動にびっくりしていた。
「だってー、家を出る時に雨が止んでたのは本当だよ?傘持って行こうとは思ったけど、『もし雨に濡れて登校したら、赤坂は心配してくれるかな?』って思って、つい……」
「もーっ、凉音は体を張りすぎなのですっ」
赤坂は教室の入口のすぐそこに席がある。だから声をかけてくれるかなって……。予想は的中した。今回の目的は、濡れた僕を赤坂に心配してもらうこと。もし風邪を引いたら赤坂に保健室に連れて行ってもらって、あわよくばベッドでセックスすること。ちなみに折り畳み傘はちゃんと用意してるよ!今日はあえて使わなかったけどね。
「でもまさか、駆け寄ってくれて、体操服も貸してくれるだなんて……。そこまでは予想してなかったよ」
「私も驚きました。弓弦は王子様なのです!」
「でしょ!?それでお姫様抱っこしてくれて……。もうかっこよかったあぁ……」
僕は頬に触れた。思い出すだけで胸がきゅんとする。これが運命の人なのだろう。
「それで!頑張って裸見せたんだよっ!」
「すごいのです凉音!いつもより進みましたね!」
「赤坂の脱がし方が色っぽくって……。しかもベルトもゆっくり外してくれて……。あれって、赤坂も緊張したのかな?ドキッとしてくれた?」
「あれは絶対してました!絶対勃起してますよ、凉音!」
チャイムさえ鳴らなければゴールインだったのになぁ。赤坂のアレを握っておけばよかった。
「『寒いから温めて』と言えば完璧でしたね」
「確かに!赤坂の肌を直接僕の肌に……。うわぁ!考えただけで鳥肌立っちゃう!」
臆病な自分を卒業し、今日は新たな自分を切り開いた。ちょっとやりすぎかもしれないけど、これでまた赤坂との距離が縮まったと思うと、僕は嬉しくてたまらなかった。
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