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陽キャと陰キャ(赤坂 side)
高校2年生になって余計に宿題が増えた。大人共は学生を何だと思ってるんだ?家に帰って飯とか風呂済ませて、そこから宿題スタートしても夜中までかかることもある。俺はほぼ帰宅部だからマシだけど、部活のあるやつらなんて寝ずにやらなきゃ終わらないだろこれ。
宿題減らないかな。と心の中でボヤきながら授業の準備をしていると、後ろから頭を叩かれた。
「よっ、赤坂!宿題見せろっ!」
「いてっ!お前なぁ!」
振り返った先にいたのは、太陽のようにギラついた笑顔を見せる男。黄崎《きざき》來斗《らいと》。金髪にピアスといういかにもチャラ男な風貌だ。前髪をヘアピンで留め、手首にはなぜかヘアゴムをつけている。とりあえずチャラい。
「物を頼む時にノートで叩くな!」
「いやー、お前の反応が面白くてさー」
ヘラヘラと笑う黄崎。こいつはしょっちゅうこうやってちょっかい出してくる。何が目的だ?陰キャをバカにしてんのか?
「つかまた宿題やってねぇのかよ」
「しょうがねぇだろー、毎日部活が忙しいんだよ、こっちは」
黄崎は片手をポケットに突っ込んで俺を見下ろしてくる。
「えっ、お前部活入ってたっけ?」
「剣道部だよっ!何回も言わせんな!」
急に怒られる。許せ、俺は認知症レベルで物忘れがひどいんだよ。わざとじゃないぞ。
そうか、剣道部か。剣道部は結構夜遅くまでやってそうだし、家に帰るのもだいぶ遅いだろうな。
「いいよなー、お前は。部活もないから楽で」
「バカ言うな、部活なくても夜中まで宿題やってんだよ。どうせお前は宿題もせずグーグー寝てんだろ」
「うるせー。部活終わったらクタクタで宿題なんかやる余裕ねぇっつーの。それにダチに返信しなきゃいけねーし。オレはお前と違って陽キャだからな」
「普通それ自分で言うか?悪かったな俺が陰キャで」
俺が不貞腐れると、黄崎がバカみたいな声で笑った。腹立たしいが実際にこいつは陽キャだ。クラスでも目立つタイプで、周りにはいつも派手そうな男女がいる。いわゆる一軍。ぱっちりとしたつり目にすらっとした鼻筋。そして高身長。男の俺から見てもイケメンの部類に入る。俺とは正反対のやつだ。
「んなことより、早くノートよこせ」
「……ホント都合いいやつ。いいけど当てにならんぞ?俺そんな頭いい訳じゃないし」
「答えさえ書いてりゃいいの!サンキュ!」
「はぁ……」
渋々俺はノートを手渡した。見せなかったらキレてきそうだし。こういうタイプって敵に回すとめんどくさそうだ。
さて授業の準備を続けるか……と思っていると、少し小さな声で黄崎に尋ねられた。
「あの、さ……」
「ん?」
「その、お前って、黒井と仲良いの?」
突然黒井について聞かれた。何でまた急に黒井なんだ?俺はとりあえず至って普通の回答をした。
「黒井?ま、まあ、悪くはない、かな」
「……っ、そうかよ」
俺のノートを片手で抱え、黄崎は大股で帰っていった。
「?それが何だってんだよ……」
頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。俺何か変なこと言ったか?実際、黒井との仲は悪くはない。流石に修学旅行で一緒に寝たやら服を脱がせたなどは言えないが。それ以外は他愛のない会話をするくらいだぞ。
あれかな、黄崎も黒井に気があるとか?あいつかなりの美少年だからな。人気者の黄崎でさえもあいつとは喋ったことないのかも。ミステリアスだし。
黒井の席に目を向けてみる。彼は本を読んでいた。何の本だろう。あいつ趣味がないって言ってたけど、読書はするんだな。本を読む横顔でさえも王子様のようだ。本当に謎に包まれている。突拍子もないことするやつだけど、話すとすごい嬉しそうな顔をする。美しすぎて世間離れしているようで、実は人間らしい面もある。ますます気になってきた。
そんな黒井の様子を、俺はぼんやりと眺めていた。
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