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気に入らない人(黒井 side)

別館2階の空き教室。僕は壁にもたれて大きなため息をついた。 「はぁ.......赤坂を狙う人がもう1人いるなんて.......。やっぱり赤坂はモテるなぁ.......」 だって赤坂はかっこいいし可愛いし色気もあるし眼鏡も似合うし外してもハァハァするし細いのに男の人らしい体つきだし声もほどよく低くてイキそうになるしセックスも上手そ(ry そりゃそうだよ、女の子からもたまに声をかけられてるし、赤坂のことを好きな人なんてたくさんいる。でもよりによって何で黄崎くんが.......。 黄崎來斗くん。クラスでも明るくみんなからの人気者。ちょっとお調子者なところもあって、一緒にいるのも派手な人達ばかり。頭は悪そうだけど運動神経が抜群で、剣道部に所属している。顔もかなりかっこいい。でもどうして赤坂を狙うの?性格も趣味も違うし、全然接点なんてなさそうなのに.......。 赤坂と黄崎くんは必ず2人きりで話す。黄崎くんはいつもはチャラチャラしていて大勢で行動しているのに、赤坂といる時に他の人を寄せ付けない。しかも幸せそうな顔をしている。口は悪いし赤坂に暴力ばかりふるっているけど、本当は好きなのがバレバレだ。 「.......気に入らないな」 そう呟いた。赤坂がモテるのは仕方ない。ただあの黄崎くんからってとこが引っかかる。別に嫌いな訳ではない。この前まで話したこともなかったから。赤坂への横暴な態度が嫌なのと、僕に見せつけるように赤坂と話すのが気に食わない。 たぶん、僕は黄崎くんに対して嫉妬と羨ましさを感じてるんだと思う。彼はリーダーシップもあるし周りから慕われている。運動もできる。僕には何の特技も趣味もないから、そういう一面が羨ましいと思ってしまう。 そして、社交的で赤坂とも楽しそうに話すところも。赤坂とふざけ合っていられるのもいいな、なんて。赤坂は黄崎くんによく怒ったりしてるけど、何だかんだ2人はじゃれ合っている。僕には見せない姿に胸が痛む。 「弱気になってはいけないのです、凉音!」 「リオン.......」 白いワンピースを翻し、突如目の前に現れたリオン。その目は息子を励ますお母さんのよう。 「そう、だよね.......。ただ、黄崎くんより自分が劣っているように思えてきて.......」 弱々しく言うと、リオンは僕の肩を強く掴んだ。 「そんなはずないです!凉音はあの日間違いなく弓弦と一緒に寝ました!相合傘もしましたしお姫様抱っこもされましたし、裸も見せました!貴方の努力と才能の賜物ですよ!」 リオンはそう言ってくれた。僕は自信をなくしていた。黄崎くんという存在によって。でも、確かに僕はこれまで頑張って赤坂にアピールしてきた。簡単に負けたくはない。 頭の中で考えが揺らいでいた。ふいに、リオンに謎の質問をされた。 「凉音。黄崎は童貞だと思いますか?」 「えっ?いや、童貞ではないと思う.......。色んな女の人と付き合ってただろうし.......」 「そうかもしれませんね。でも考えてみてください。弓弦に対して、彼は童貞かつ処女だと思いませんか?たとえ黄崎が女性との関係を持って非童貞だとしても、弓弦とは行為に及んでないでしょう」 赤坂に対して……。流石の黄崎くんもまだ赤坂と体を重ねたことはないはず。あったら許さないけど。きっとないに違いない。 「弓弦との恋愛において、貴方も黄崎も童貞で処女。つまり、同じ立ち位置にいるのです。性格や持っている武器は違えど、スタートラインは同じです。では、その上で弓弦を勝ち取るために必要なのは.......?」 「それは、赤坂への限りない愛と積極性.......?」 僕が口にすると、リオンは満面の笑みを浮かべた。 「正解です!貴方はその点において黄崎よりも十分リードしているはずです。その調子で弓弦にもっと近づくのみですよ!」 僕ははっとした。そうだ、今さら黄崎くんの才能を妬んでもだめだ。僕にできることは、赤坂への愛情を真正面からぶつけること。黄崎くんなんかに負けちゃだめなんだ.......! 「そうだね。僕、絶対赤坂とセックスしてみせる!」 「ファイトですよ、凉音!」 リオンのおかげでヤル気がメラメラ燃えてきた。もう黄崎くんに負けはしない。僕は僕の力で赤坂とゴールインするんだ! 気持ちを取り戻した僕は、完全無敵な状態に陥っていた。今ならみんながいる教室でもセックスできそうな気がする。 「そうと決まれば、早速練習してみましょう!まずは言葉責めの練習からです」 「言葉責めか.......。『赤坂、そんな可愛い声で喘がれたら.......僕、もう我慢しないよ?』」 「いいですね、そのセリフ」 「『ふふっ、赤坂。もうこんなになってる.......。僕のこと求めてくれてたの?.......ううん、嬉しい。だって僕も.......ほら、触って?これが、今から中に入るんだよ?あっ、だめだよそんなことしちゃ.......そんなことされたら.......理性なくなるよ?いいの?んっ、ああっ.......』」 ――ガラガラガラガラ!! 突然、大きな音を立ててドアが開いた。 教室の外にいたのは、まさかの人物だった。

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