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第7話  すれ違い

あれから、学校では優を見かける程度であまり会うことはなかった。どちらも連絡を取ることがなくなってあっと言う間に夏休みだ。当然ながら夏休み中も、会うことはなかった。 そんな時、智樹くんからメールが届いた。「優也が怪我して家にいる。俺は、親戚に不幸があって行けないから行ってやってほしい。」と言う内容だ。 優が、怪我してる。何も考えず家を飛び出して優のところへ向かった。 305のインターホンを押す。 ピンポーン 「…… 。」 携帯で連絡してみる。「家にいる?寝てるかな?」送信。返信が来た。「寝てる。」動けないでいるのか心配だった。あんなことがあったのも忘れて「鍵開けて」送信。少ししてから開けてくれた。 初めて優の家に来た時みたいに二人でソファーに座った。思っていたより怪我はしていなかったが、相変わらず手は腫れていた。 「大丈夫なの?」 「ああ、大丈夫だ。智樹が連絡したのか?」 「うん。連絡来た時は驚いて気づいたら走ってたよ」笑いながら話す亮太を見て優は目を逸らした。 「何で来たんだよ」 「…だって、僕たち友達でしょ?友達が怪我したら心配するのは当たり前じゃないの?」 「…… 」 「それに、しばらく会ってなかったし…」 沈黙があったけど、僕は優の手の怪我にそっと触れた。 「大丈夫?痛そうだよ。傷が残っちゃうよ。」 「傷があると嫌か?」 「うん…見るの辛いし、気になっちゃうから…」 「お前が気にすることじゃねーだろ」 「そうかもしれないけど…」 「もういーだろ。寝るから帰れよ。」 「え?あ、うん。安静にね。じゃあ…」     パタン 言い終わる前に閉められた。こんなに、そっけなくされるのは初めてだった。やっぱり前みたいに友達に戻ることは無理なんだ… 夏休みも終わり、本格的に受験勉強に取り組んだ。両親も理解してくれ、東京の大学をめざした。 僕と優は友達になる前の関係に戻った。すれ違っても声すらかけない…優は僕を見ようともしない。僕は、優にこんなにも嫌われることをしてしまったのだろうか… 気を抜くと優のことを考える。考えても答えなんて分からないのに考えてしまう。 それでも、勉強は頑張った。頑張った甲斐があって無事合格し、あとは卒業式を待つだけになった。 優も智樹くんも地元の大学に受かったらしい。卒業式が終わったら東京の環境に慣れるために早めに引っ越すことが決まっている。だから、卒業式までに、もう一度優と話がしたいと思っていたのに、声をかけることができず…メールすらする勇気が出せなかった。 卒業式を終え、とうとう明日引っ越す…引っ越してしまえば、本当に会えなくなる。 何も手につかない。 会おう。とりあえず優の家に行こう。そう自分を奮い立たせて向かった。 マンションに着くと、運良く出てくる人がいてすれ違いで入ることができた。優の部屋の前、インターホンを押そうとした時、中から声が聞こえた。優の声と女の人の声だ。 直ぐに立ち去れば良かったんだ。この時は、まだ知らない。後悔だけが胸を締め付けることになるとは…

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