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第11話 優のトラウマ

優が話し出すまでに少しの沈黙があった。なかなか話し出せずにいる優の手を取ってそっと握った。 「そう言えば、傷、薄くなってきたね。ずっと喧嘩してない?」 「あぁ、もうガキじゃねーからな」 「そうだね」 「亮太は、傷があるのは嫌なんだろ?…傷のない綺麗な身体がいい?」 「何それ 笑」 「前に言ってた…傷があると気になるって、、」 「あー前にそんな事話したね。そりゃそうだよ、好きな人や大事な人に傷があるのは普通嫌でしょ?だって傷って痛みを伴うものだから傷があるってことは痛い思いをしたってことなんだよ。だから、あの当時、喧嘩で負けてもいないのに手が腫れてるのがとても痛そうで見るのが辛かった。だから、傷があるから好きにならないとかじゃなくて痛い思いをしてなければいいなって」 「……」 「優?」 握った手を引いて抱きしめられた。ぎゅっと抱きしめてくる優の背中を優しく撫でる。泣いてる様に感じるほど弱々しく見えた。 「優?話すの今度でもいいよ?」 無言のまま首を振る。話そうとしている。どんなに長くなったとしても優が話してくれるのなら待とう。優しく背中を撫で続けていると優が話し始めた。 僕が見た母親に小さい頃、熱湯をかけられて背中に大きな火傷があること。昔、その火傷を偶然見た女の子から気持ち悪いと言われ、身体を見られるのが怖くなったこと。再開した日以降、何もしなかったのは、このまま身体の関係になってしまったら、いつか火傷を見られるんじゃないかと不安で、見られたら僕が去っていくと思ってたこと。母親に熱湯をかけられた際「お前さえいなければ」と言われたことで、自分から去る人を追いかけることができないこと。 ゆっくりゆっくり、途切れ途切れ話してくれた優を今度は僕が強く抱きしめた。本当は誰よりも愛されたいと叫んでいる様な悲痛の声ごと強く抱きしめた。 「優…追いかけるの怖かったよね?でも、来てくれてありがとう。このままじゃ、嫌だって思ってくれたってことだよね?火傷は見せなくていいよ。もちろん、見たからと言って嫌いになったりしないし離れたりしない。だけど、これだけは聞かせて?優は僕のことどう思ってる?どうなりたい?まだ考えてるならそれでもいい。今の気持ちを聞かせて?」 「……」 返事はないが、ぎゅっと抱きしめる腕に力がはいる。僕も、これ以上は聞かず抱きしめる。 「優、大好きだよ」 優は、自分の事をこんなに話すのは初めてだったかもしれない。力が尽きた様に眠った。いつもは、優の腕枕で寝るが、今日は僕が優に腕枕をし抱きしめて眠った。 「優…またね。」 「あぁ…」 僕は東京に戻り、また慌ただしい日々が始まった。 優のトラウマは僕が何と言おうと、優自身で乗り越えなければ先には進めない。その日が来るまで待とうと思う。笑って抱きしめようと思う。

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