12 / 34

第12話 好きな奴

夏休みも終わり、講義とアルバイトに明け暮れていた。 大学では、それなりに友達もできて新しい出会いの場も多くあった。 今日はバイトだが、珍しく明日明後日の土日は連休になった。せっかくの休みだが、家でダラダラしながら優に借りた、あの恋愛の映画を観ようと決めていた。 今日のバイトが終わったら、久しぶりに優に電話でもしてみようかな。あれから、優からの連絡はないが好きな気持ちは変わらない。まだまだ時間がかかることは分かっているつもりだ。優を追い詰めるわけではなく、ただただ僕が優の声を聞きたいだけなのだ。 プルルル  プルルル 「もしもし」 「あ、優?元気にしてる?」 「あぁ。元気にしてる」 「今、大丈夫?」 「うん、、いいけど」 「僕、今バイト終わって帰ってるところ」 「まっすぐ帰るのか?」 「うん、帰るよ。あーでも、明日明後日ってバイト休みでさ、この前借りた映画観ようと思ってるんだけど、二日間家から出ないでいいように、色々買い込んで帰る予定だよ」 「そっか。どこの店に行くんだ?」 「アパートの近くにスーパーがあってね、そこに寄るよ。優はなにしてるの?」 「今から好きな奴に会いに行くところ」 「え?…へぇ…そうなんだね…邪魔しちゃってごめんね」 「いや、全然問題ない」  「…あーじゃあ、そろそろスーパーに着くから切ろうかな。付き合ってくれてありがとね…」 「おぅ、またな」 やばい…スーパーに入ったものの動揺して何も買えないでいる。気を抜くと目が熱くなる…そっか…そうなんだ…でも、良かった…心の傷を癒してくれる人に出会えたんだね……苦しい…また心が痛くなる、、 適当にお菓子や飲み物などの食料を買って外へ出た。多分、涙目になって目が赤くなっているだろう。大きく深呼吸をして歩き出そうとした時、買い物した荷物が取られた。 「⁈っ…」 驚いて振り向くと、そこには優がいた。 「よぉ。」 「優…?」 「目赤くない?」 「え…なんっで…」 「言ったろ?今から好きな奴に会いに行くって」 「え、え、ん?え!優⁈」 「ん?」 「どう言うこと⁈」 「だーかーら、好きな奴に会いに来たんだよ」 「それって、、さ…」 「亮太しかいないだろ?」 「っもーっ待ってたよ!」 「悪かったな。待たせちまって」 「っ優…」 優に抱きつきたい気持ちを抑えて、そっと手を握る。これは何の涙なのか溢れて止まらない。優は困った様に笑って涙を指でとる。 二人、照れ笑いをして亮太のアパートへ歩いた。

ともだちにシェアしよう!