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第12話 好きな奴
夏休みも終わり、講義とアルバイトに明け暮れていた。
大学では、それなりに友達もできて新しい出会いの場も多くあった。
今日はバイトだが、珍しく明日明後日の土日は連休になった。せっかくの休みだが、家でダラダラしながら優に借りた、あの恋愛の映画を観ようと決めていた。
今日のバイトが終わったら、久しぶりに優に電話でもしてみようかな。あれから、優からの連絡はないが好きな気持ちは変わらない。まだまだ時間がかかることは分かっているつもりだ。優を追い詰めるわけではなく、ただただ僕が優の声を聞きたいだけなのだ。
プルルル プルルル
「もしもし」
「あ、優?元気にしてる?」
「あぁ。元気にしてる」
「今、大丈夫?」
「うん、、いいけど」
「僕、今バイト終わって帰ってるところ」
「まっすぐ帰るのか?」
「うん、帰るよ。あーでも、明日明後日ってバイト休みでさ、この前借りた映画観ようと思ってるんだけど、二日間家から出ないでいいように、色々買い込んで帰る予定だよ」
「そっか。どこの店に行くんだ?」
「アパートの近くにスーパーがあってね、そこに寄るよ。優はなにしてるの?」
「今から好きな奴に会いに行くところ」
「え?…へぇ…そうなんだね…邪魔しちゃってごめんね」
「いや、全然問題ない」
「…あーじゃあ、そろそろスーパーに着くから切ろうかな。付き合ってくれてありがとね…」
「おぅ、またな」
やばい…スーパーに入ったものの動揺して何も買えないでいる。気を抜くと目が熱くなる…そっか…そうなんだ…でも、良かった…心の傷を癒してくれる人に出会えたんだね……苦しい…また心が痛くなる、、
適当にお菓子や飲み物などの食料を買って外へ出た。多分、涙目になって目が赤くなっているだろう。大きく深呼吸をして歩き出そうとした時、買い物した荷物が取られた。
「⁈っ…」
驚いて振り向くと、そこには優がいた。
「よぉ。」
「優…?」
「目赤くない?」
「え…なんっで…」
「言ったろ?今から好きな奴に会いに行くって」
「え、え、ん?え!優⁈」
「ん?」
「どう言うこと⁈」
「だーかーら、好きな奴に会いに来たんだよ」
「それって、、さ…」
「亮太しかいないだろ?」
「っもーっ待ってたよ!」
「悪かったな。待たせちまって」
「っ優…」
優に抱きつきたい気持ちを抑えて、そっと手を握る。これは何の涙なのか溢れて止まらない。優は困った様に笑って涙を指でとる。
二人、照れ笑いをして亮太のアパートへ歩いた。
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