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第25話
「もしもし?亮太」
「もしもし?智樹くん?」
「うおー声出るようになったのか!」
「うん。色々あって。でさ、聞きたい…」
「優也のことだろ?」
智樹くんは、待ってましたと言わんばかりに被せるように言ってきた。
「あ、うん、そう」
「今、ちょうどトイレ行ってんだけど、一緒に飲んでて…明日の朝の新幹線で東京戻るってよ」
「!!とりあえず、今からそっち行っていい?」
「あぁ。いいぜー。」
「ごめんね。智樹くんも久しぶりの再会で話したいことたくさんあると思うんだけど」
「今度、三人で飲めればいいよ」
どこまでも、男前な智樹くんだ。
いつもの居酒屋に急いだ。そしていつもの個室。
「智樹…どう言うつもりで…」
「亮太も俺のダチなの。ゆっくり話せよ。分かってんだろ大事なもん後回しにするなよ」
「智樹くんありがとう」
「……」
智樹が出て行った後の静かな部屋。黙々と飲んで食べる優。
「あの…優…」
「……」
「優…」
「ガリガリのままじゃん」
「え?あぁ、うん、あんまり食べれなくなっちゃって。でも…元気だよ」
「そっか、元気ならよかったよ」
「優は?」
「俺も、まぁまぁ元気」
「そっか、よかった」
少しの沈黙の後、優は急にポケットから携帯を出して誰かと話出した。
「あぁ、もうすぐ帰るから。うん。あぁ、わかった。俺も愛してる。」
「……」
「話がないなら帰るけど」
「うん、話あったんだけど、今の恋人?」
「あぁ、まぁな。」
「そっか……僕の時間だけがあの日から止まってたんだ……ごめんね…帰るよ…」
「……」
動き出すのが遅過ぎたんだ…
溢れる涙は止めどなくて後悔ばかりがのしかかる。
これ以上は、もう無理…何もできない… だけど、
悪あがきでもいい最後に、もう一度だけ気持ちを伝えよう、、
次の日の朝、新幹線乗り場で優を待って言った。
「あの、、コレ…」
「… 」
「まだあの部屋に住んでる。僕は明日帰る!恋人がいるのにこんなことごめん!だけど、も、もっもしっ恋人と別れることがあって僕に会ってもいいと思ったらいつでも来て欲しい」
「別れること前提かよ…」
「それは違う…邪魔はしない。だけど、その鍵だけは持ってて欲しい…わがまま言ってごめん、、」
新幹線に乗りため息をつく。亮太…お前全然分かってねーな、、恋人なんているかよ。お前を一度も忘れたことはない…だけど、三年前のあの時みたいにガリガリで…あの時と同じで俺はお前に何もしてやれない。同じことを繰り返すならお互い辛いだけだ。…そう、、優も亮太を忘れようと必死だったし辛かった。休みの日も仕事に明け暮れ…それでも、一人になって考えることは亮太のことだ。どれだけの涙を流しただろうか…
2月の冷えた夜空を見上げて、明日は休みだと同僚と飲み過ぎて、結構酔ってしまってヤバいなぁ…と客観的に見てしまう自分がアホくさくて笑えてきた…亮太に会いたい…そう思いながら歩いていたからか、いつの間にか亮太が暮らすアパートの前に来ていた。鍵も未練たらしく自分の家の鍵と一緒に持ち歩いている。
真夜中、部屋の電気は消えている。一瞬だけ…寝顔を見るだけ…と言い訳をしながら部屋に入る。静かな部屋の中、既に寝ているだろうと寝室へ行くがいない。家にいないのか?ゆっくりとリビングへ行くと、あのソファーに亮太は寝ていた。近くまで行き、亮太を眺める…
チュッ
!!
自分でも驚いた。理性も何もない、気づいたらキスしてた…慌てて部屋から出て、酔いも一気に覚め急ぎ足で自宅へ帰った。
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