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第30話

それから本当に引越しを早めてくれたようで、あっという間だった。元々優のソファーは優がいなくなってからずっと寝起きをしていたためだいぶへたっていた。 「このソファーも思い切って買い替えるか?」 「え…」 「だいぶ、へたってるし…てか、何でベットで寝なかったんだよ」 「だって…ベットは広すぎるし、ソファーだったら優の匂いが残ってて落ち着くから…でも最近では匂いもしなくなってきてたんだ…」 「俺たちはまた始まったんだ。もう一生離れないから」 「うん。二度と一人にしないで」 荷物の整理をして、二人での生活が始まった。結局ソファーも新しく買い替えて喧嘩もせず幸せな毎日だった。だけど、僕には一つだけ気になることがあった。優の両親のことだ。僕は家族からも認めてもらいとても幸せだけど、優は家族の話をしないから…火傷のこと、ひどい言葉によって傷つけられた心…憎んでいるんだろうな… 気になってはいたものの直接聞くことも出来ず数ヶ月が過ぎた。優はコンビニに行っていてまだ帰ってきていない。一人になるとこんなことを考えるようになった。 ピンポーン 「はい、、どちらさまでしょうか」 「赤城優也の母です」 「…優の…」 「入れていただけるかしら」 「あ、は、はい」 断ることもできず入れてしまったが、もうすぐ優が帰ってきてしまう 「あの…僕は橘花亮太と申します」 「…優也はどこに?」 「今、出かけていますが、もうすぐ帰ってくると思います」 「では、優也が帰ってくる前に単刀直入にいいます。優也と別れてください」 深々と頭を下げてそう言われたけど、急なことで何が何だかわからず何も言えなかった。 「あなたがどんなつもりで優也とお付き合いをしているのかは分かりませんが、あの子は将来人の上に立つ人なんです。それが、男性同士だなんて…人の上に立つ人がそうだと誰もついてこないでしょう?もし、こんなことが噂でも広まればあの子の未来は…あなたに責任が取れますか?それから、もう知っているかもしれませんが…私は優也が幼い頃に心と身体を傷つけてしまいました…どんなに愚かなことを…ですが、私は赤城の姓からは外れていますがあの子には幸せになってほしい。後ろ指を刺されるようなことはしてほしくありません。あなたから別れてくださればあの子も諦めがつくと思います。…どうかお願いします」 「……」 過去に何があってあんなことをしてしまったのかは分からないが過去を悔いていること、優を愛していることそれは伝わってくる。 ただ…頭が真っ白だった…何とか理解はできたが…何も言えなかった…優のお母さんが置いて行った名刺には大企業の名前があり、優のお父さんの名前があった。 自分は赤城の人間ではないが優のお父さんがどんな人物なのか知らしめるために置いて行ったのだろう。裏にはお母さんの携帯の番号もあった。

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