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第31話
はぁーどうしよう…優に言えばもっとお母さんとの溝は深まるだろうし、このまま何もなかったかのようにしてていいことでもないし、、でも、もしあの大企業の跡取りなのであればお母さんの言う通り世間体が気にはなるのもわかる…優は家のことは何も言わないし僕が思うに今、勤めている会社をすごく頑張っているから実家の会社を継ぐなんて少しも考えていないような気がする。
考えても答えの出ないことをウジウジと考え一ヶ月がすぎた。
ブーブーブー
「知らない番号…もしもし」
「もしもし、優也の母ですが、、優也とはどうなりましたか?」
別れていないことを知っているのに、わざとそんな聞き方をして、、
「いえ、別れるつもりはありませんので…」
「では、こちらにも考えがあります」
「何をするつもりですか?!」
「あなたが別れられないと言うのであれば、別れざるを得ない状況にするだけのことです」
「そんな…」
次の日、会社に行くと課長に呼び出された。何も聞かず溜まりに溜まった有給を消化しなさいとのことだ。そして問題はこの後だ、有給消化が終わっても会社へは来なくていい、、それは実質上解雇ということではないか!?やばい、これはやばいぞ、、とは、言っても優と別れる気などさらさらない。確かに入りたくて入った会社でとてもやりがいもある。その会社を辞めるのは理由が理由なだけに悔しい思いもあるが、だけど優がいなかった時のことを思い出すと、優がいない方がダメージはでかい。よって、僕は次の就職先を考えながらも有給を謳歌することに決めた。優のお母さんに負けてたまるか
よ!勢いだけは良かったが…いろんな不安が消えない。だが、これでも優のお母さんが許してくれなければ次は何をされるのか…この場合テレビでよく見るパターンは次に巻き込まれるのは家族だ…一通り前に戻った体重が、急激に痩せ始めたため優が心配してくる。そりゃそうだよな…カモフラージュのため朝はスーツに着替えアパートの下で優と別れる。近くの公園のベンチで少し時間を潰して帰るのが日課になっていた。だけど、この日は最悪なことに営業で外に出ていた優に会ってしまった、、
「亮太!こんなところで何やってんだよ」
「優!優こそ何で?」
「俺は外回りでたまたま通ったんだよ」
「そうなんだ……」
「亮太お前…俺にあ何か隠してんな?、、まぁ明日休みだし帰ったらゆっくり聞くから、逃げんなよ」
「え…あ、、うん。」
急足で去っていく優を見ながら、いよいよどうするか決めなければならなくなった。変な嘘をついても多分バレてしまうだろ…自分が優の立場だったら隠さず言ってほしいって絶対思うだろうから正直に言ってみるか…
「んで?何隠してんの?」
優の膝の間に座らされて抱きしめた体勢で問われる。
優は僕にだけ甘えるように一緒に家にいる時は常に触れられるところにいる。
「うん…先に謝っとく。ごめん。」
「は?何が?」
「えーっと…この前ね、、優がいない時に優のお母さんが来たん、、だよね、、」
「は!?何で言わねーんだよ!何してったあいつ!」
「…優、落ち着いて…僕さ、、優と別れろって言われて…」
「ッチ、あいつ絶対許さねー。で、亮太は何て言ったんだ?」
「僕は今幸せで、優がいなきゃダメだって分かってるから…何も相談せずに別れないって言い切っちゃった。」
安心したようにギュウっと抱きしめてくる優にきっと同じ考えなのだろうとホッとした。
「それでいい。他には?何もされてない?」
「…うーん、、」
「言え」
「うーん…実は今、有給消化中なんだけどそれが終わっても会社には来なくていいって言われてるんだ…多分…」
「何で言わねーんだよ!それもあいつの仕業だろ!?おい、朝一緒に出てるのは俺を騙すためだったのか?」
「いや、騙すとかじゃなくて心配するかなと思って…次の仕事探してから言おうと思ってたんだけど…ごめん」
優は怒ってはいても抱きしめる力が強くなるだけで出て行ったり離れることはしなかった。それが、すごく嬉しかったし安心した。
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