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第12話 のたりのたり

 ふ、と意識が浮上する。  うつらうつらしながらも、オレを気にしてくれてるせい兄ちゃんと目が合った。 「ノタ」  せい兄ちゃんが溶けちゃいそうに甘い顔で笑って、オレの頬を撫でた。   「に…ちゃ」 「年甲斐もなく浮かれちゃったよ……大丈夫?」    だいじょばないです。  せい兄ちゃんの全力を受け止めたので、オレは今日使い物にならない予感満載です。  ってことを訴えたいけど、その余力もない。  ので、オレは出せる力全部でせい兄ちゃんにすり寄る。  見送りとか片付けとか手伝えないけど、しょう兄ちゃんの思惑に乗った挙句の事態だから、何とかしてくれるだろう。  しょう兄ちゃんのことだから、きっとこの状態になるのは予想してる。  あとでせい兄ちゃんと二人で、しょう兄ちゃんに遊ばれてあげたら、しょう兄ちゃんは納得してくれるはず。   「ノタ……? また寝ちゃった?」    ゆらゆら。  せい兄ちゃんに抱きしめられて、揺れてる感じ。  こんな平和なゆらゆらが、のたりのたりなんだなって、思った。  のんびりゆったり、春の海が揺れている感じ。  今は、盆の終わりだけどね。  でもいいんだ。  せい兄ちゃんの春海は、嬉しくて幸せで、のたりのたりなのだ。   「ノタ? ……おやすみ」    せい兄ちゃんが優しい声で呼んでくれる。  起きたらまた、呼んでね。  ちゃんと、呼んでね。  『呼ぶな』って言うけど、呼んでね。  お約束だからね。   END 

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