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新しい出会い

梅雨が始まったばかりの蒸し暑い日の事。中途採用という形で私立、明峰高校へとやって来た獅子谷怜旺に任されたのは、2年F組の担任としてクラスを受け持つことだった。 校長や教頭も手をやいているという学校一の問題児クラス。聞けば前任の教師は学級崩壊を食い止められず精神的に病んでしまったのだという。 「――本当に大丈夫ですか?」 教室に入る前から既に騒がしい声が聞こえてくる扉の前で、隣に立つ初老の教頭――田沼が心配そうに尋ねてきた。うんざりだと言わんばかりの表情で小さく溜息をつく。その様子だけで今までの苦労が窺えるようだったがそんな事は関係ない。 「えぇ、問題ありませんよ。とりあえずやってみます」 「……くれぐれも無理だけはしないでくださいね。何かあったらすぐに私に相談してください」 「わかりました」 行きますよと。気合を入れながら扉に手を掛ける教頭の様子に思わず吹き出してしまいそうになりながら、ゆっくりと後に続く。 「ほら、お前ら! 始業のチャイムは鳴ってるんだぞ! 席に着かんか!!」 教頭の声など全く耳に入っていない生徒たちに向かって怒鳴るように声を上げれば、「うるせー」「じいさん黙れー」などと口汚く返される始末だ。 だが、その後に続いて入って来た怜旺を見て、一瞬だけ教室内が静かになった。 「えー、誰あれ?」 「さぁ? つか、芋っぽくない? 前髪モサってるし」 「細っそいし、なんか弱そー」 そんなヒソヒソ声が聞こえてくる中、構わず怜旺は黒板に自分の名前を書いた。 「今日から、このクラスを担当することになった獅子谷です。よろしく」 「あのチビ、教師だったんか。小さかったから小学生かと思――」 「――あぁ?」 チビと言われた瞬間、貼り付かせていた笑顔が引きつり笑いに変わり、物凄い勢いで生徒の前まで行くと、罵った生徒の顎を掴んで持ち上げる。 そのままギリギリと力を込めてやれば、痛いのかバタバタと暴れ始めた。 「いまなんつった?」

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