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新しい出会い 4
それから30分ほどが経った頃、突然教室の扉ががらりと開いた。視線をそちらに移せば、肩まで付きそうな金髪を緩くハーフアップでまとめた長身の男が気だるげに立っている。両耳には複数のピアス。制服のボタンを緩く開け、首元にはネックレスが光っていた。
明らかにガラの悪い見た目の生徒の登場に、教室内の空気が明らかに変わったのがわかった。
恐らくコイツがこのクラスのボスだろう。
「ふあぁ。……はよ。んだよ、珍しく静かじゃん。なんでみんな黙ってんだ?」
「圭斗。いや……それが……」
圭斗と呼ばれた男の言葉に、先ほど顎を掴んだだけでビビっていた男――亮雅と呼ばれていた――が、ちらちらと困ったようにこちらを見ながら言い淀む。その態度に、圭斗は首を傾げた。
「あぁ? んだよ、ハッキリ言えよ」
「あ、いや、その……バカ川の代わりに来た奴がちょっとヤバそうな奴でさ」
チラリと、視線を投げかけられ、仮面のように貼り付かせた営業スマイルで返した。
「アイツが? ただの優男じゃん」
ニヤリと口角を上げて笑う圭斗に、周囲の生徒たちは不安そうにお互いを見合う。そんな空気を気にすることなく、圭斗は怜旺の元へと歩み寄ってくる。
「あんた名前は?」
「人に名前を聞くときは自分からって小学校で習わなかったのか?」
そう返してやれば、圭斗はピクリと眉を動かしたが、すぐにへらりと笑ってみせた。
「あー、はいはい。名前ね。俺は椎堂圭斗。で、あんたは?」
「獅子谷怜旺、27歳。専門教科は全般受け持つことになった。趣味は……」
「誰もそこまで聞いてねぇよ」
綺麗に染め上がった金髪を面倒くさそうに掻き上げ、薄い茶色の瞳が眇められる。じっくり観察するように上から下までたっぷりと時間をかけて眺められた後、圭斗の唇が弧を描いた。
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