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バレた!
明峰高校に来てからあっという間に一週間が過ぎ、6月も終わりに近付いてきた頃。怜旺は夜の闇に紛れて駅前にひっそりと佇む、とあるファッションホテルの前に立っていた。
「――いつ来ても、いかにもって名前だな……」
ファッションホテルと言えば聞こえはいいが、要はラブホである。
”マリン”と書かれた看板は海をイメージしているのだろうか。青いネオン管で縁取られた文字の下にはイルカの絵が描かれている。
外観は派手ではないがそれなりにお洒落な造りで、表向きは一見すると普通のビジネスホテルに見えるのだが、周囲から隠すようにして設置された入り口やパーキングスペースがここが普通の宿泊施設でないことを物語っていた。
誰にも会わないように工夫されたエントランスを抜け、エレベーターに乗り込むと青白いLEDで照らされた薄暗い廊下を歩いていく。
いつもこの瞬間だけはどうしても緊張して、逃げ出したい気持ちになってしまう。これからしようとしていることを考えれば当然の事なのだけれど。
大丈夫。心を無にしていればすぐに終わる。全く自分の好みじゃないフェロモン香水に甘ったるいボディソープの混じった匂いを纏わせ、心が冷たく冷え切っていくのを感じながら何度も自分に言い聞かせる。
ドアの前で深呼吸をしてから扉をノックすると、中からはいはーいと間延びした返事があった後、鍵の外される音がして扉が開かれた。
「こんばんは、ご指名ありがとうございます。ピンクキャットのレオで――」
「……時間ぴったりだなって……あれ?」
こちらの顔を見るなり固まってしまった男に、怜旺も思わず営業スマイルを貼り付かせた顔のまま言葉を失ってしまう。
「あれあれあれー? 獅子谷じゃん。何やってんだよ。え? マジ?」
(……最悪だ)
よりによって一番会いたくない奴に出会ってしまった。
「……あ、はは……。すみません、間違えました」
背中に嫌な汗がだらだらと流れ、これはマズいと踵を返そうとしたその時、腕を強く引かれて半ば強引に部屋の中へと引きずり込まれてしまった。
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