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バレた! 2
「んなとこで、何やってんだよセンセ」
ニヤリと笑いながら自分を羽交い絞めにしている男は、初日に顎を掴んで黙らせた赤い髪の男。――八神亮雅だった。
「ひ、人違いじゃないですか?」
「人違い? んなわけねぇだろ。だって自分でさっき名乗ったじゃん。”ピンクキャットのレオ”だって」
「……くっ」
確かに自分で言った事だが、まさかこんな所で自分の教え子に会うとは思ってもみなかった。
もし、今日ここに呼び出したのがコイツだと知っていたら絶対に来なかった。
と言うか、高校生がラブホに呼び出すなよ。とか、なんでこんな所に居るんだとか、色々と言いたいことはあるのに上手く言葉が出てこない。
「いやぁ、そうじゃねぇかなって思ってたけど、まさかビンゴだったなんてな。なぁ、センセ」
「……ッ」
ぐいっと腰を引き寄せられ、耳元で囁かれる。
熱い吐息に背筋にゾッと悪寒が走り、反射的に離れようと身を捩ったが、ガッチリとホールドされていて逃げられない。
「……おい、亮雅。何もうサカろうとしてんだよ」
低めのよく通る声が響いたかと思うと、奥の部屋から出てきた金髪が視界の端を掠めた。
――椎堂圭斗。
怜旺が最も会いたくないと思っていた男の登場に心臓が大きく跳ね上がる。
「へぇ? 珍しく当たったじゃん。お前の勘」
怜旺の姿を認めるなり、圭斗の切れ長の目が眇められ、鋭い視線で射抜かれる。
困惑して瞳を揺らす怜旺の頬を、圭斗の指先が悪戯に撫でおろした。
艶めかしい仕草に薄気味悪さを感じて、指が辿った肌がピリピリと粟立つ。初めて会った時のように全身をくまなく舐めるような目つきで見つめられて息苦しくなった。
「……だ、誰かと勘違いしてるんじゃないですか? さっきから先生ってっ……あぁ、もしかして、そう言う設定がお好きなんですかね?」
引きつりそうになる頬を必死に誤魔化しながら、精一杯の作り笑顔を浮かべる。
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