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知られたくない

圭斗は約束を守った。翌日、憂鬱な気分で学校へ行くと、いつもと変わらない風景がそこに広がっていて身構えていた自分が馬鹿らしくなった程だ。 誰にも言うなと口止めされていると言っていた亮雅も目が合った時に意味深な笑みを向けられたくらいで、特に変わった様子は見られなかった。 昨夜のアレはやはり、悪い夢だったのだろうか。そう思いたくなるほど何も変わらない日常に怜旺はホッと胸をなで下ろす。 ――だが、悪夢はまだまだ始まったばかりだった。 授業の途中でガラリと扉が開き、何時ものように堂々と遅刻して来た圭斗の姿を確認し、思わず舌打ちしたくなるのをグッと堪える。 「お前、今何時間目かわかってんのか?」 「んー? さぁ? まぁいいじゃん。ちゃんと学校には来てるんだし」 「……」 悪びれもなく言い放つ男の態度にイライラが募る。だが、こんな所で言い合って、うっかりバラされたら堪ったものじゃない。 「……わかった。もういい」 溜息混じりに吐き出すと、圭斗はニィッと口角を上げて笑みを深めた。 怜旺は平常心を装いながら、授業の続きをすべく教壇へと戻った。 初めて自己紹介した日のインパクトが強かったせいか、随分と授業がやりやすくはなった。  学級崩壊を起こしかけていたクラスだとは思えないくらいに授業中も比較的静かになっている。 多少のざわつきはあるものの、それは何処のクラスでもあり得る事で、想定の範囲内ではある。 だが、怜旺の胸の奥では忸怩たる思いが渦巻いていた。 時折感じる圭斗の視線は怜旺の神経を逆撫でし、不快な思いをさせるばかりだ。

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