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知られたくない 5

「っ! よせっ! ……っ自分で出来る!」 屈辱的な命令に唇を噛みしめながら、強引に差し出された紙袋を受け取ると、シャツに手を掛ける。 相手の顔を見ながら脱ぐのは流石に恥ずかしかったので、くるりと背を向けて俯いたまま震える手でゆっくりとボタンを外してゆく。 背後に圭斗の視線を痛いほど感じて、嫌でも手が小刻みに揺れてしまう。 流石にベルトを外すのは躊躇われ、その前にと渋々紙袋に手を入れた。 「――な……っ、おまっコレ……っいつの間に!?」 てっきり、如何わしい昔ながらの体操服か、セーラー服でも入っているかと思っていたのに、中に入っていたのは黒いシースルーのシャツだった。 胸元に申し訳程度に付けられた裏地以外は透けて見える仕様になっている。 おまけに生地が薄く、少しでも動いたら乳首が浮き出て見えてしまいそうな代物だ。 怜旺はこのシャツに見覚えがあった。 ……だってこれは……。 「お前、コレを何処で……」 「コレか? 昨日アンタのカバンの中に入ってたんだ。見覚えあるだろう? つーか、なんで隠してたんだよソレ」 悪びれもせずいけしゃあしゃあと言い放つ。 確かに昨日、その服はカバンの中に予備として入れておいたものだった。家に戻って確認した時、入って無かったので、元から入れていなかったのだと思い込んでいた。 だが、それがまさか圭斗の手に渡っていたなんて思いもしなかった。 「……人のカバンの中を漁るなんて、窃盗と一緒だぞ」 「だから、いま返しただろ? いいからほら、着て見せろって」 怜旺の抗議などまるで無視して、圭斗は早くしろと言わんばかりに急かす。 だが、こんな破廉恥な格好を晒す事など出来るわけがない。怜旺は首を横に振って拒否を示した。 「こんな格好出来るか! こんなものを着るなら体育服でも着ていた方がまだマシだ!!」 付き合ってられるか!と吐き捨てるように言うと、ドアを塞ぐように立っている彼を押し退けようと、怜旺は圭斗の胸ぐらを掴んだ。

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