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トラブル
3階校舎の一番奥。普段は滅多に人の来ないトイレに駆け込み、一番端の個室にて、怜旺は力無く便器の上に座り込んでいた。
あれから散々犯され続け、何度も中に出された。しかも一度や二度ではなく、その回数は計り知れない。
(クソッ、あのバカどんだけ出すんだ!)
舌打ちしたくなるのを何とか堪え体内に吐き出されたモノを掻き出して行くうちになんだか情けない気分になって来て、思わず自嘲的な溜息が洩れた。
今がまだ授業中で良かった。こんな情けない姿、誰にも見せられない。
行為が終わった後、放心状態だった怜旺に圭斗はすっきりしたような顔をして、去り際にこう言い放った。
「―また相手してくれよ。センセ」
と、言う事は、圭斗はまた呼び出すつもりなのだろう。冗談じゃない。あんな屈辱二度と御免だ。
アイツを一刻も早くどうにかしなくては……。でも、どうやって? 何か弱みを握る?
出口のない迷路に迷い込んだように、考えれば考える程、深みに嵌っていく。
「くそっ……」
やりきれない思いで壁を叩いたが、それは思ったよりも弱弱しく、鈍い音が響いただけだった。
――お前にはその身体位しか価値が無いんだから――。
ふと、思い出したくもない父親の言葉が脳裏を過った。母親の死によって人が変わってしまった実の父が冷酷に怜旺を見下ろす表情が、圭斗の姿と重なる。
「――……」
あぁ、そうだった。自分は何の取り柄もない。ちっぽけな存在だ。抵抗して怪我をするなんて馬鹿げている。
今までだってずっとそうしてきたじゃないか。何を今更怖気づく必要がある? 相手にする男がたまたま、自分が受け持つ生徒だったって言うだけだ。
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