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トラブル 3
重怠い腰を軽く叩きつつ、相変わらず騒々しい教室の前で立ち止まる。
締めきった蒸し風呂のような部屋での行為のせいで、なんだか自分が汗臭いような気もするが、それはもう仕方がない。
後は帰りのLHRを残すのみ。ここさえうまく誤魔化すことが出来たら、昼間にあった出来事を誰にも悟られずに一日を終えることが出来る。
思わず洩れそうになる溜息を押し殺し、深呼吸を一つすると意を決して扉に指を掛けた。
「お前達HR始めるぞ。席に――……」
「おおっと! 手が滑ったぁ!!」
「!?」
扉を開くのとほぼ同時。いきなりわざとらしい声が聞こえて来たと思ったら怜旺目掛けて大量の水が勢いよく飛んで来た。
避ける暇もなく全身ずぶ濡れになり、床に滴り落ちた水溜りが怜旺を中心に広がっていく。
あまりに突然すぎて理解が追い付かず唖然としていると、視界の端にバケツがひっくり返っているのが見えた。
「――……」
水を掛けられたのだと理解するのに数秒を要し、そこで漸く怒りが沸々と湧いて来る。だが、ここで怒るのは得策ではないだろうと思い直し平静を取り繕おうとした途端、今度は大きな笑いが起きた。
「ぎゃはははははっ!! ひっでぇ!」
「つか、なんだよ亮雅。棒読みすぎ! 演技下手くそかよ」
あぁ、なんだ。そう言う事か……。こんな幼稚な事をして何が楽しいのか理解に苦しむが、でもまぁ、濡れたお陰で気になっていた汗やその他いろいろな匂いも誤魔化せそうだ。
「……たく、びしょびしょになったな。まぁ、今が暑い季節で良かったよ」
怜旺は呆れた口調で呟くと、濡れた前髪を掻き上げながらざわつく教室内を見渡した。
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