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トラブル 4
「ほら、席に着け。連絡事項がいくつかあるから、よく聞くんだぞお前ら。もうすぐ、期末考査が始まる。赤点取った奴は全員夏休み返上で補習だからな! あと、先週配布した書類は大事なものだから全員提出するように」
何事も無かったかのように振舞う怜旺に生徒達はざわめき、戸惑いの声を漏らしていた。
「つか、そのままやる……のか? 乳首、透けてみえてっけど」
「え? あぁ、別に僕は気にならないので。それとも……八神は男の乳首を見て興奮するような変態なのか?」
「なっ! ち、ちげーしっ!! ざけんな! テメェと一緒にすんな!!」
「何の事だか分りかねるな」
いけしゃぁしゃぁと言い放ち、何事もなかったかのように全身びしょ濡れのまま淡々と連絡事項を読み上げていく。
反論してこない所をみるに、亮雅は昨日の動画を持ってはいないのだろう。もしも、あの時撮影したものを持っていたとするならば、もっと違う言い方をしたはずだ。
だとすれば、亮雅は警戒するに値しない。自分が警戒しなければいけない男はただ一人――。
どこに居るのかはわからないが、空席になっている圭斗の机を何処かホッとしたような気持で見つめた後、教室内に視線を戻す。
「連絡事項は、以上だ。もうすぐ雨が降り出すらしいから、今日は寄り道せずに真っすぐ帰るんだぞ」
怜旺はそう締め括ると、教壇を降りて教室から出て行こうとする。
「おい、待てよ。このまま帰る気かよ。床、濡れてんじゃん」
「あ?」
呼び止められて振り向くと、ちょっとイキった感じの男子生徒が数名こちらを睨んでいた。
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