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トラブル 8
肩まで付きそうなやや長めの金色の髪が、太陽に照らされてキラキラと輝いている。
「椎堂……。何か用か?」
思わず身構えつつ、そっけなく訊ねれば、圭斗はフッと笑ってポケットから何かを取り出し、差し出して来る。
「忘れモン。 あんたのだろ? ソレ」
咄嗟に手を出し握らされたのは、トイレから出る際にポケットに突っ込んだはずの怜旺の下着だった。
「な……っ」
「廊下に落ちてたぜ? 良かったなぁ、気付いたのが俺で」
それが何か認識した途端、怜旺の顔は羞恥で真っ赤に茹で上がった。圭斗はそれをにやりと意地の悪い笑みを浮かべたまま見つめている。
「なぁ、アンタもしかして、今ノーパ「それ以上言うな!!!」」
慌てて圭斗の口を塞ぐと、必死の形相で睨みつける。圭斗はニヤリと口角を上げて楽しげな表情になると、怜旺の手を振り払って再び口を開いた。
「へぇ~。アンタでもそんな顔するんだな。ウケる」
「……クッ、元はと言えばお前のせいだろうがっ!」
「俺のせい?」
「そうだ! お前がおかしな事をしなければこんな事にはならなかった!」
そう責め立てて睨み付ければ圭斗は一瞬目を丸くした後、堪えきれないと言った風に吹き出した。
「俺のせい、ねぇ」
髪を掻き上げ、圭斗の目が細められた。口元に嘲笑じみた笑みが浮かぶ。
何故だか胸騒ぎがして落ち着かない。心臓がドクンっと大きく跳ね上がる音が聞こえた気がした。
「そうか。じゃあ、責任取ってやらないとな」
一気に距離を詰め、圭斗の長い指先が頬に触れそうになり怜旺はその手を咄嗟に振り払うと距離を取る。
「……ッ拾ってくれた事には感謝する。だが、責任とかそう言うものは必要ない。もうすぐ雨が降り出すからお前もさっさと家に帰るんだな!」
これ以上相手のペースに乗せられて堪るかと言わんばかりに睨み付け、捨て台詞を残してその場を離れる。
背後でくくっと忍び笑いが聞こえてきたが、怜旺は振り返る事はしなかった。
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