46 / 342

謎 

その日以降、圭斗に度々呼び出されては、身体を求められる日々が暫く続いた。勝手に追加登録してあったメッセージアプリを使用して、時間と場所だけが一方的に送られてくる。 勿論、好きで関係を続けているわけでは無い。無下に断って無理難題を押し付けてきたり、秘密をバラされたら困るので、仕方なく応じているに過ぎないだけだ。 「あーくそ、あっちーな……。ヤる気うせる……」 行為後、額から流れ出る汗を拭いながら圭斗が呟いた。 怜旺はというと、圭斗のモノを散々中に注がれ、疲労感と倦怠感に襲われていて、もはや起き上がって文句を言う気力すら残っていなかった。 「なら、止めればいいだろ……」 掠れた声でやっとそれだけ口にすると、怜旺は気だるげに髪を掻き上げ体育館倉庫の壁に寄り掛かる。 大雨で声は搔き消されるし、校舎からは見えない位置にあるから誰かに見られる心配も無いのだが、クーラーの利いていない倉庫内の湿度は異常だ。おまけに雨と土の臭いで息をするだけでも不快感が増すばかりで、暑さと相まってまるでサウナに入っているような気分だ。 この不快指数の高すぎる密室で、しかも男同士でセックスなんてとても正気の沙汰とは思えない。 「今度はもっと涼しい所探そうぜ。流石に無理だわ……」 「お前にはヤらないって選択肢は無いのか」 と言うか、その前に暑いと言うのならその長い髪を切ってしまえばいいのに。と、常々思う。 鬱陶しくはないのだろうか? 何日か前にチラリと聞いてみたもののはぐらかされるばかりで、結局答えを聞けず仕舞いだった。 まぁ、別に知りたい訳でもないのでどうでもいいのだけれど。 床に放り投げた服を拾い集め、気だるげに袖を通していると、怜旺のスマホが着信を告げた。こんな時間に連絡を寄越すのは目の前にいるこの男か、忌々しい実父しかいない。 どうせ、金の無心かピンクキャットの客引きの誘いだろう。 タイミングが悪い事この上ない。 怜旺は鳴り響くバイブ音に気付かない振りをして着替えようとした。

ともだちにシェアしよう!