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謎 6

だって、あいつのあの時の目は、殺したいほど憎んでいるヤツがする目じゃなかった。 昔ヤンチャしていた関係で、人の殺意のあるなし位は簡単に見抜ける自信があった。 圭斗のあの目は、殺したいのではなく、むしろ……――。 そこまで考えて怜旺は思考を中断した。なんとなく、これ以上は踏み込んではいけないような気がしたから。 「……本当に椎堂がを突き落とせと言ったのか? いつだ? いつ、そんな事を……」 動揺して声が震える。なぜ圭斗がそんな指示を出したのか理解出来ないし、そんな卑怯な事をする男だと思いたくなかった。 「……あ、え……っと、あっ! ま、間違いました! すみませんっ! 椎堂君じゃなくて八神君でした! 先生が怪我をしたら……暫く学校に来れないだろうからって。僕、二人に虐められてて……言う事聞かないと酷い目に遭わせるぞって脅されてて……それで……」 「…………」 怜旺の視線から逃れるように器用に視線を彷徨わせ、何かを察したのか慌てて都築が訂正する。 この子の言っている事は本当なのだろうか? 落ちたショックで未だに混乱していて、単純に圭斗と亮雅を言い間違えたのかもしれないが、ただの虚言である可能性だって否定は出来ない。 例え悪ふざけの延長だったとしても、今回の件は少し度が過ぎているのではないだろうか。どっちにしろ情報が少なすぎるしもう少し調べる必要がありそうだ。 「そうか。……正直に話してくれてありがとな。後は俺に任せておけ。お前はゆっくり休んでていいから。落ち着いたら教室に戻れよ」 「えっ、あ……はい」 今は深く追求すべきタイミングでは無いと判断を下して、怜旺は都築の頭をポンと軽く叩いて立ち上がると、そのまま保健室を後にした。

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