61 / 342
動揺 4
そんなわけがない。授業中に生徒とこんなことをしているだなんて、知られることだけは絶対に避けたい。
なのに、圭斗は容赦なく怜旺の身体を弄り、快楽を引き出そうとしてくる。
圭斗が空き教室を指定して来た時から嫌な予感はしていたが、まさか授業の途中から何処かのクラスが隣の視聴覚室に移動してくるなんてタイミングが悪いとしか言いようがない。
人の気配を感じて部屋から出ようとした所を圭斗に見付かり、引きずり込まれるようにして今に至る。これなら、多少蒸し暑くても誰も近づくことが無い体育館倉庫の方がいくらかマシと言うものだ。
いくらドアの陰に隠れて廊下からは死角になっているとはいえ、今は授業中だ。もしも誰かが間違えて扉を開けるような事があれば、すぐに見つかってしまうだろう。
「く、離せ……っこんな、誰か来たら、どうする気だっ」
「そしたら、アンタのこの、いやらしい格好が一番に見られることになるな」
憎たらしいほどに、平然と言ってのける。
「俺は別に失うものなんてたかが知れてるけど、アンタはそうじゃないだろう?」
「っ、いい加減に……っ」
たまりかねて、怜旺は踵を上げて真下にある足を踏みつけようと振り降ろした。だが、既にそこに足は無く、咎めるように性器を強めに握られてしまい、思わず喉が引き攣って声が出そうになった。同時に耳の中に熱い舌を差し入れられる。
「う、……っ」
濡れた舌が、鼓膜を大きく震わせた。声を上げそうになり、唇を噛んで必死に堪える。耳の中で圭斗が立てる卑猥な水音と、すぐ隣から聞こえて来る教室の声が混ざり合い、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
ともだちにシェアしよう!