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動揺 6

さっきのアレは何だったのだろうか? 結局その後、帰りのHRにも圭斗は姿を現さなかった。一体どういうつもりなのかと問いただすつもりだったのに。 さっきの圭斗の行動の意味が判らずにモヤモヤした思いを抱えたまま、自分のデスクに戻ると髪をクシャッと掻き上げ大きく息を吐いた。 圭斗が何を考えているのかさっぱりわからない。いつもの彼らしくない行動の数々を思い返し、怜旺は眉を潜める。 ただ自分がやりたいだけなら何時ものように無理やり犯せば良いものを、思えば今日の圭斗は最初からどこか可笑しかった。 人の言う事を聞かず強引にコトを運ぼうとする姿勢はいつもと変わらないが、今日はやたらと人の胸を撫で回していた。 今まで何度となく体を重ねてきたが、一度もそんな事はしなかったのにどうして今日に限って? しかもなんでキスなんか――。しっとりと吸われた柔らかな感触がまだ唇に残っているようで、怜旺は自分の唇にそっと触れてみる。 途端に、まだ熱を持っているかのように錯覚してしまうくらい生々しい感触が蘇って来て、ゾクンと怪しい疼きが腰の奥に生まれた気がして慌てて首を振って追い払った。 (な、何考えてんだよ俺は) こんな場所で、不謹慎極まりない想像をしている場合ではないというのに。 あんなのはきっと圭斗の気まぐれだ。きっとそうだ。そうに違いない。 深い意味なんてあるわけがない。 圭斗にとって自分との行為は只の暇つぶしのようなものでしかないのだから。それ以上の感情なんてあり得るわけがないのに。 アイツがいつもと違う事をするからいけないんだ――。 そう結論付けて、無理矢理気持ちを切り替えると怜旺は机の上に積まれた書類の山へと向き直った。

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