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動揺 8

「いきなりなんなんですか」 一体何を言い出すのかと眉を寄せれば、彼は苦笑いを浮かべて肩をすくめて見せた。 「えー、だってさ、獅子谷センセ、最近妙にエロいっつーか。唇触ってる回数やたら多いし、赤い顔して目ぇ潤ませてたり?」 「っ……いや、そんなはず……」 「あー、目元にあるホクロのせいですかね? とにかくやべーって言うか。わかりやすく言えば発情期みたいな」 ―――その表現はどうなのだろう。 あまりの明け透けな物言いに怜旺は呆れて言葉を失う。 確かに自分は、ここ数日圭斗の事で頭がいっぱいで、うっかり体が火照ってしまう事が何度かあったけれども! でも、だからと言ってけして発情しているわけではない。 いやいや、そんな事あるわけ無い。断じて。 「たく、和樹。お前また変な事言って困らせてるだろ。この馬鹿っ」 「いてっ」 ゴツンと小気味いい音がして、背後からやってきた増田からゲンコツを食らい鷲野が頭を押さえてデスクに突っ伏する。 「すみません、獅子谷先生。コイツすーぐエロネタに持っていきたがるんですよ」 「は、はぁ……」 「えーっ、だって事実じゃん」 殴られても懲りていないのか、すぐに復活した鷲野がぶぅっと頬を膨らませる。 子供っぽい仕草は可愛らしいが、中身はとんでもないセクハラ野郎である。 「だって。じゃねぇ! いきなり白昼堂々発情期がどうのって言い出す馬鹿がどこに居るんだ! 迷惑考えろアホっ!」 再び拳骨を落とされ、鷲野が渋々口を閉ざした。 前々から思っていたが、このコンビは年も離れていそうなのに、とても仲がいい。 きっとお互いが強い信頼関係で結ばれているのだろうと容易に想像が付いた。

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